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落下速度


 サヤ、お前を誘ってやろう。闇よりも深い、情念だけが渦巻く快楽の淵へ。
 柔らかな曲線を描く胸の頂。その中心に触れるたびにサヤの肌が上気する。幼いやつだと思っていたのに体は存外成熟しているものだ。すでにこの体を味わった人間がいるのだろうか。
 死の先に存在する私に欲望など芽生えるはずもないが、闇に浮かぶ白い肌はなまめかしく、体の芯に得体の知れない熱を呼ぶ。
「ねえ……も、もう、やめようよ……」
 掠れた哀願の声を鼻で笑い、内股を撫で回す。閉じようとした足を割り、その付け根に指を潜りこませた。暗く静かな部屋に湿った音が響く。
「……それが本心ではないようだな」
 サヤの頬が赤く染まり、唇を噛みしめながら屈辱感に眉を寄せる。そんな態度は嗜虐心を煽るだけだとまだ気付かないのか? 拘束した腕を優しく撫でながら、首筋に舌を這わせる。鈍りきった感覚の中にかすかに揺らめくものを感じた。

――わたし、スカルミリョーネのこと大好き
 臆面もなく言ってのけたその言葉の、なんと軽いことか。今はもう後悔していることだろう。この娘を壊してしまいたい。欲情に身を任せよがり狂う様が見たい。
 お前はもっと知るべきだ。言葉にできぬほど深い執着の恐ろしさを。苦悶の表情を浮かべ、私を憎むがいい。泣き叫び悔恨に引き裂かれろ。それこそが私の望む快楽だ。
「ひっ、んぁっ! や、そこ、やだっ……んんぅ!」
 欲望を垂れ流し続ける秘肉に顔を近づけ突起を吸い上げると、サヤの腰が跳ね逃げようともがく。 それを両手で抑えつけ、深く舌を差し入れる。
「お前の中は熱いな……」
「あふ……ん、はぁっ、やめ……」
 内側を舐める速度に合わせサヤの口から嬌声が漏れる。焦らすようにゆっくりと中心から遠ざかれば、切なさが増してゆく。本気でやめてほしいなら、もっと懇願するのだな。今更止めてやる気などないが。馬鹿なことを口にしたものだと悔やむのは、すべてが終わってからだ。

「はっ、あぅ……もうっ……だめ、こん、な……んぅ」
「……嫌なのは当たり前だろう。お前を苦しめるためにしているんだからな」
「どぉ、して……?」
 涙を浮かべサヤが私を見る。その真っ直ぐな視線が疎ましくて仕方がない。いつも、いつも……。
「お前が嫌いだからだ」
「あぐっ、ううううううう!!」
 手近にあった短剣を引き寄せ、柄を強引に捩込む。あがった悲鳴は行為と言葉、どちらのせいか。
「いやっ! やだ、抜いて、……抜いてよぉ!」
「痛いか?」
 それでいい。サヤの頬を涙が伝い、その跡に口を寄せる。まるで口づけのようだな。……何を馬鹿なことを。苛立ち紛れに手の中の短剣を抜き差しすればサヤの表情が苦痛に歪み、少し満たされた。

「痛いよっ! ……んなの、やだ! スカルミリョーネの、体……じゃ、ないもん……っ」
「は?」
 思わず間の抜けた返事をしてしまった。どうしたことだ。なぜこの状況でまで私のほうが動揺させられている? 混乱に手が止まり、サヤに僅かばかりの余裕が戻る。
「嫌われたって……わたしは、スカルミリョーネが好きだもん。だから……だ、だから、嫌だけど、べつにこんなことぐらい……」
 なぜそこで頬を染めるんだ。違う、何かが間違っている。どうにかして修正しなければ。しかし一体どこでずれたんだ。
「でも、こんなの、絶対やだ! こんな物でわたしにさわらないでよ! 嫌がらせだってなんだって、ちゃんと、スカルミリョーネの体で……してよ……!」
 泣き叫んで懇願しろ……? こういう展開ではなかったはずだが。サヤの愚かさは私の想像を遥かに越えていたということか。

「……馬鹿だなお前は。本当に、どうしようもない」
「ひぁ、うぅん!」
 短剣を抜き去るとサヤの秘肉から血が流れ出た。覆いかぶさり、奪われた快楽を求めてひくつくそこに熱くたぎったものをあてがう。
「お前が呼び起こしのだからな……最後まで、しっかり受け止めろ」
「あぁ、んっ!」
 貫かれる痛みの声に今度は甘さが混じる。私にそんな機能はないが、泣きたい気分というのはこういうものなのだろうか。結局いついかなる時にも、サヤの前では敗北を認めるしかない。……さっさと諦めてしまったほうが楽かもな。
「あっ、んん! ふぁ、ああっ! ス、スカル、ミリョ、ネぇ、好き……大好き……!」
「……そうか」

 膣肉の絡み付く感覚に頭がとけそうだ。サヤは痛みと快感に身悶えながらまた馬鹿なことを口走る。そんな余裕は気にくわんな。しかし腕を縛られた不自由な体で私の胸に頬を擦り寄せてくるサヤを見ていると、次は拘束も必要ないか、などとらしくもない考えが浮かぶ。言葉も忘れるほど激しくしてやろうか。考える隙があってはならない。サヤにも、私にも。
 同じ言葉は返してやらんぞ。そこまで落ちる気はないからな。……今のところは。

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