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燃え上がれ


 やっぱダメ。熱い。熱い! 死ぬ! おれにさわると火傷するぜとかそんなレベルじゃなくて、一歩踏み出した先に死の世界が見えてるような、切羽詰まった苦しさ。
 泣いて頼んでも聞いてもらえない。好きの意味が変わってから、ルビカンテに泣き落としは通じない。っていうかたぶん泣くのを楽しんでる。紳士はやっぱりモンスターだった……。
「ル、ルビカンテ、おねが」
「聞けないな」
「っ、あ……動いちゃ、ぁ……んっ……」
 とりあえず一回、抜いて! 言うだけでも言わせてよ。保護者じゃなくなったルビカンテが容赦なく責め立てる。傷つけないようにとか、そんな遠慮はまったくなくて……いや、もう全然痛くはないけど、受け入れるべきものを完全に覚えてしまったというか、お願いだからわざと音たてるのはやめてください。

「サヤ、知っているか? 魔物にとって行為は生殖活動ではないんだ」
「あぁッ……はなし、かけ……なら、止まっ、止めて、」
 珍しく言うことを少しだけ聞いてくれて、突き上げる動きがゆっくりになった。でもたぶん優しさじゃない。じっくりたっぷり、いまどこを擦られてるのか実感しちゃう。性急さが消えた分だけ理性が戻ってる。恥ずかしさで死にそう。
 声を抑えようと口に当ててた右腕がおもいっきり引っ張られて、繋がったまま膝の上に乗せられて中で変わった角度に泣きそうになった。火がついたままの体をそっと抱きしめられる。相変わらず下半身に違和感があるけど見ないふりをする。
 ルビカンテの胸に顔を埋めて、反応するとこを見られずに済む。ちょっとだけ落ち着いた。
「じゃ、じゃあ……どうやって、こども、っ……つくるの?」
「子作り、というもの自体がないな。新たな魔物は自然に溢れる魔力の中から勝手に沸いてくる」
 カビみたい。いや、妖精みたいとか言った方がよかった。そっか、ルビカンテは妖精さんだったのか。捕まえると自機が減るんだね。ううぅ、脳みそが溶けてきた……。
「性行為はただ快楽を得るためのものでしかない」
 これも? って……聞きたくない。なんか、やな予感がする。俯いてた顎を掴まれて、無理やり視線を上げられた。
 呆けたみたいに開いてた口を慌てて閉じても時既に遅し。キスなんて生易しいものじゃない、唇をなぞって舐められた。次に何を言う気なのか、なんとなくわかっちゃってギュッと目をつむる。

「相手を支配する事こそが、この身に刻み込まれた最高の快楽だ……」
「……じゃあ、いますっごく気持ちいいんだろうね」
「いや。まだまだ足りないな」
 言っとくけど、わたし、これ以上は無理だからね!? ってセリフは飲み込まされた。ルビカンテのキスは正直なとこ苦手だったりする。抑えてた熱がぜんぶ溢れて流れてくるみたい。体ごと溶けだしそうになる……。
「……バルバリシアが帰ってくるな」
 あー、今日はどこに遊びに行ってたんだろ。じっとしてるの、わたし以上に苦手だからね。今はゴルベーザの命令だってないんだ……し…………?
「えええっ」
「移動しようか」
「っえ、ちょっと待っ……!」
 普通こういう場合は大急ぎで何でもないふりとかするんじゃないのとか、言う暇なかった。ぐるんと闇に包まれて体が分解される。慣れたと思っても何度も驚いてしまう浮遊感に、振り落とされないように目の前の体に抱き着く。

 いつもならほんの数十秒のはずが、それじゃ済まなかった。ルビカンテにしがみつく感覚まで消えて、繋がってる意識だけ、内側で感じてる律動だけに埋め尽くされた。五感が開かれてそのすべてで熱を受け止める。
 例えるなら一秒間に十回も二十回も果てるような、真っ白な快感。ぐちゃぐちゃに掻き乱されて何も考えられない。体じゃなくて精神でイッてしまった……。
 転移した先で、二人分の体重を支えきれずにルビカンテが倒れ込んだ。じわじわ戻ってきた本来の体の感覚で、接合部分から熱い液が溢れるのを感じる。
「くッ……な、何だ今のは……?」
「あ、ぁ……う……」
「サヤ、大丈夫か。というか……私が大丈夫ではないんだが」
 わたしも大丈夫じゃない。しゃべれないし、足腰立たなくなってる。放り出された膝がガクガク震えてる。絶頂に引きずられて意識が戻ってこない。
 なに いまの だめ きもちよすぎて
「う、ぅ……ルビカンテぇ……」
 心と体を分けて考えられるのか、って……無理に決まってる。だっていま混じり合ってた。ぜんぶ溶けて一つになって、燃え上がって……まだ燻ってる。
「今日、もう……好きなだけ、していいよ……」

「……これは盲点だったな」
 なにが?
「その言葉、忘れるなよ」
 忘れるとかじゃなくて、覚えてられない。体の中心がビリッと震えて、一拍遅れて胸にさわられたことに気づく。さわられただけなのに。
「ぁっ、あっんぅ……あぁっ」
「…………」
 今日は帰れないって聞こえたかもしれない。わからない。どうだってよくなってる。体の芯が熱くて熱くて、それを上回るモノを求めてる。
 探るようにやわらかく撫でてた手から次第に遠慮がなくなって、指先で先端を押し込まれる。乳房全体を包み込んで擦り合わされ、時折鎖骨の下あたりを吸い上げられた。
 思考が言葉にならない。ルビカンテが欲しい。もっと深く、もっと強く、支配されて壊されてもいいから。体が跳ねるたびに中で存在感を増していく。モンスターになる。
「っふぁ、あぁっん……かきまわし、もっ……!」
 言い終わらない内に右肩を押さえ込まれて、衝撃をどこにも逃がせずに何度も突き上げられる。鋭い快感が絶え間無く押し寄せてきて声が出なかった。炎の塊みたいになったルビカンテがわたしの最奥を攻め掛かり、子宮の入口に当たるたびに果てたようにさえ思える。
 えぐるような突きに腰と腰が擦り合って、太股を濡らした液体がいやらしい音をたてる。根本まで飲み込むと、起ちっぱなしの突起がこすれて頭の奥で悲鳴をあげた。音のない声が聞こえたみたいなタイミングで、ルビカンテの指がそれを摘む。親指で押し上げて、中指と薬指で軽く挟んで揺らし、抽挿に合わせて強く弱く追い立てる。

 気持ちいいのを通り越して苦しくなって、今は更にその先にいた。大きく前後に揺れていた動きが、小さく鋭くなっていく。心臓に届きそうなほど強く奥の方を掻き乱されて、意識を手放しそうで、だけどもっと感じていたくて必死でしがみついた。
 肩を押さえてた手が離れて、腰を抱き寄せられる。耳元にルビカンテの呼吸を感じた。言葉もなく、意思もなく、互いの存在だけ。どうしよう。わたしもう戻れない……かも……。




 意識を失ってたのか、ただわけわかんなくなってたのか……ふと我に返ると部屋に戻ってて、布団に包まったわたしを座り込んだルビカンテが抱えてた。
「起きたか……」
「わたし、寝てた?」
「いや、寝ていたというか、……す、すまない」
 なんで謝るのかいまいちわからないけど、気を失ってたみたい。
「あれは……まずいな……今後は控えよう」
 正直、どんどんやろうって言うかと思ってたから安心した。なるべく思い出したくない。なにもなかった。うん、わたしは何も言ってないしやってないし、覚えてない!

「なんかすっごい疲れた」
「ああ、私もだ」
「珍しいね」
 絶倫のくせに、とか思ったけどさすがに言えない。
「あれは駄目だ……私の自尊心が持たない」
「へ? まさか恥ずかしかったの? ルビカンテが?」
「サヤの切羽詰まった顔を見るのはいいが、私が追い詰められるのが気に入らない」
 なんだその勝手な言い分! わたしの自尊心が傷つけられてるんですけど。
「我慢できないくらい気持ち良かったの?」
「……それは、お前が」
「そっかぁ、余裕なかったんだね。感じちゃって」
「………………そういうお前こそ」
「いつもよりたくさん出してたもんね」
 ゴツンって音がして後頭部に衝撃が走った。頭突きされたのかと思って振り返ると、うなだれたルビカンテが負のオーラを放ってる。なんか本気で落ち込んでる。……優位にたてないの、嫌いだもんね。わたしだって同じ状況だったんだけど、そんなことにも気づけないほど気持ちよかったんだ。
 ……フハハハ! 弱者の立場、思い知れ! 今こそ復讐の時!!

「……またしてもいいよ?」
「いや、いい」
「またしたいなぁ」
「やめておく」
「ていうかあれ以外でするの、禁止にしようか」
「勘弁してくれ……」
 腕の中で向き直って、俯く視線を遮る。うーん、素晴らしいイジメのネタを手に入れちゃった。
「わたしが約束やぶっちゃったから、教えてあげようか、いい事」
 少し顔を上げて表情が変わる。期待と、それ以上の不安。その話題をいま持ち出してくるのは怪しい、でも聞きたいって。
「わたし、一つだけルビカンテに勝てることがあるんだよ」
「……何だ?」
 たぶん、いま、すっごい楽しそうな顔してるよ、わたし。
「好きって気持ちの強さ」
 ルビカンテの表情が明るくなった。勝利を確信した顔。残念でした、次のセリフまで計画通り!
「残念だがそれだけは何があっても私の方が強いな」
「そうだね。入れなおしてすぐイッちゃうくらいだもんね」
 また突っ伏したルビカンテの顔は、わたしの肩に埋もれて見えない。忘れてくれって小さな声からして、また泣かせちゃったかもしれない。
 これに懲りたらもう少し紳士に戻るといいよ。

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