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実験台-水


「これ、疲れがとれるお香なんだって。使ってみない?」
「いらねえ」
 ばっさりと切り捨てられた。なんか面白そうかも、カイナッツォ相手ならあんまり罪悪感もわかないし……なんて本音を見透かされた気がして冷や汗をかいた。だけどここで退くわけにもいかない。強引にお香を取り出し火をつける。
「ま、そう言わずに……試すだけでも!」
「お前なんか企んでないか……おい、使うなって!」
「大丈夫だってば、信用してよ」
「できるか! あからさまに怪しいんだよ! ……なんかくせえぞ、それ」
 バロン城の一室に甘く強い香りが漂った。いい匂いだと思うんだけどな……。鼻が刺激されて頭の奥が少しクラクラしたけど、他には特に変わったこともない。至近距離で匂いを嗅いだカイナッツォは顔をしかめてわたしを睨む。その表情がちょっとずつ和らいで、次第にぼーっとし始めた。
「カイナッツォ? 大丈夫……わわっ」
 名前を呼ぶと、それに反応したように腕が伸ばされる。体が引き寄せられてカイナッツォの上に倒れ込んだ。甲羅の冷たさがじんわり染みる。
「……なんだこりゃ……サヤ、それ一体、何なんだ」
「ど、どうしたの?」
「なんか、お前を見てると妙に……」
 ぴたりとかちあった目が妖しく光ったような気がした。起こした身体をまた引き倒される。その上にカイナッツォが覆いかぶさってきた。この体勢って、かなり危険なんじゃ……。

「サヤ……」
 切なそうな声がいつもと違いすぎて、わけもわからず心臓が跳ねた。洗脳、催眠……人の意思を奪って虜にする? なんだか思ってたのと違う展開になりつつある。ルゲイエを問い詰める頃には手遅れになってそうだなぁ、なんて呑気なこと考えてる場合じゃないってば。
「カ、カイナッツォ……? とりあえず、のいてほしいんだけど」
「…………」
 無言でしばらく見つめ合う。わたしの深いところまで見透かすような視線に気持ちが焦る。わたしはカイナッツォがなに考えてるのか、わかんないのに……っていうかぜんぜん言うこと聞いてくれないじゃない、ルゲイエのばか! うそつき!
「……」
 重なってた視線がずれてカイナッツォの目線がどんどん下がっていく。首筋を辿って胸からお腹へ。そして臍の少し下あたりで止まった。
「……前からと後ろから、どっちか選べ」
「ええっ!」
 なんの二択なのか聞きたくない! なんでわたしが追い込まれてるの? わたしの返事を待たずにカイナッツォの手が伸びる。抵抗の隙をついてやたらと手際よく服が脱がされ、あっという間に下着姿にされた。
「選べねえなら両方だな……」
 掠れた声でつぶやきながらカイナッツォの手がブラジャーの中に差し入れられる。身体が震えたのは冷たい感触のせいだけ?

「ちょ、っと待ってよ、なんでこんな状況になってるんだっけ?」
「お前が誘ったんだろ」
 誘ってない! 断じて誘ってない!! ひんやりした手が乳房を揉みしだきながら下着をずらして胸を露出させる。なんでわたし、ろくに抵抗できないんだろう。
「柔らかいな……」
「やんっ……や、だっ……」
 カイナッツォの言葉が寄せられた胸の谷間に吸い込まれる。硬くなった乳首を爪先で弾かれて思わず妙な声が出た。お願いだからリセットさせてよ、ぜったい変なんだってば。
「お前すげえ美味そうな匂いがする」
 言いながら乳頭に吸い付いて丹念に舐めあげる。二重の意味で食べられそうで怖い。甘い快感に身震いしていると太股を硬い何かが撫でた。恐る恐る覗き込むと、カイナッツォの尾が反り返って先の方の穴から紫がかったグロテスクな物体が露出していた。その見た目よりもまず、大きさに、体が強張る。
「……無理だよ! 死んじゃうよ!」
「オレだって無理だ。我慢できねえ」
「無理の意味がちがうー!」
 涙目で訴えると胸を弄りまわしていたカイナッツォの動きが止まった。からかったり悪ふざけしたりしながらもぎりぎり最後の一線だけは守ってくれる、普段の面影が垣間見えたようで少し安心したのもつかの間。
「……だったらこうするか」
 呪文のように何かをつぶやくと、わたしの視界が真っ暗になった。体に触れてくる感触がさっきと違う。怖くなって差し出した手が触れたのはカイナッツォの甲羅ではなく、もっと柔らかい人間の体のような。
「えっ、なに……なんで」
「ちゃんとオレを想像してろよ?」
 胸板だと思う部分を確かめるように撫でていた手を、カイナッツォが導いていく。指先にほのかな熱を持った何かが触れた。伝染したようにわたしの頬も熱くなる。何が起きてるのか目に見えなくて怖い。けど見えたら見えたで恥ずかしいし。
 もうやだ、ぜったいやだ。頭ではそう思ってるのに、体とうまく繋がらない。それどころかわたしの指は、誘ったのはわたしだという言葉をなぞり、自分から煽るように絡みついていく。
「うぁっ……くっ、お前、挑発してんのか?」
 指で輪を作り、竿の部分を柔らかく握って上下させると、耳元でカイナッツォの切羽詰まった声。もう片方の手で先端を撫でる。手の平に押し付けるように腰が動き始めた。荒い息が首にかかってホントにしてるみたいな錯覚が起きる。

「んっ! い、いたいよ……」
 カイナッツォがわたしの胸に噛みついた。鋭い痛みのあとに今度は柔らかい舌で撫でられて、正反対の刺激に思考がふやけてきた。怒張をこすりつけられる摩擦で手の平が熱い。溢れ出した液体が潤滑油になって、カイナッツォの動きが早くなる。
「サヤ、サヤ……」
「う、うん」
 目を開いてもそこにあるのはただの暗闇。余裕をなくした声だけが、すがりついてくる存在はカイナッツォなんだって証明してた。その変貌ぶりにどうしていいかわかんなくて、間抜けな返事をしてじっと身を任せる。
「な、んなんだよ、これ。くそっ……訳分かんねえ」
 きつく抱きしめられて、目は見えないし手も塞がって身動きがとれない。仕方がないから突き上げる動きで揺れる胸元に顔を寄せる。汗ばんでいつもより温かい肌にドキドキした。手の中でカイナッツォのモノが強く脈打って、熱い液体がお腹の上にぶちまけられる。

「……先に謝っとく、悪い」
 なんだか深刻そうな謝罪に不安になる。わたしの膝を割ってカイナッツォの体が入り込んできた。両足を掴まれて思い切り開かされると、羞恥心を感じる間もなく強烈な痛みが全身を貫く。
「いっ、ぐぅ……!?」
 何が何だかわかんなくて、思わずバシバシとカイナッツォの体を叩いた。その振動でまた痛みがはしる。
「あう……っ、いたい! 痛いよ! 泣きそう……ッ」
「……すまん、本っ当に……オレもう、無理」
「な、なにが……あぐっ! やぁっ、動かない、で……」
 ごめんと無理を繰り返しながら激しく腰を打ち付ける。馴らしてもいないそこがみしみしと悲鳴をあげた。無理なのも許してほしいのもこっちだよ。わたしの中でカイナッツォがまた硬さを増していく。内側を擦られるたび体をはしる激痛に悲鳴をあげながら、涙が頬を伝う。それでも不思議と後悔はしてなかった。
「泣くなって……頼む、止まらねえんだよ……」
「っ、ぁく……ごめ……んうぅッ、ひっ……」
「謝る、なっ……」
 もう、じゃあ一体どうしろっての!? 抗議の声は揺さぶられる勢いで掻き消される。カイナッツォの声から滲む後悔が腹立たしかった。わたしが必死で痛みに耐えてるのに、なんでそっちが悔やんでるのかな!

「いてえ! 噛むなよ、おい」
「わたしの、が、痛いっ!」
「そ、だな……わりぃ」
「ああっ、ぁう……やっ、ぜったい、んぅ……悪いっ、思ってな……あぁん!」
「う、くっ……思ってるって……遠慮は、しねえけど」
 言葉通りにカイナッツォの動きが一層激しくなる。一突きごとにほんの少しずつ痛みは和らいで、痺れるような感覚が押し寄せてくる。
「はぁっ、あああっ! やだぁ、あんっ、あぁう!」
「嫌? しっかり、よがってんじゃねえか……ッお前の中……すげえ、グチョグチョになってんぞ」
「ああっ、だっ……だって、うぅっ、んッ」
 そんなのただの防衛本能だよ。なんて言い返せない。波のように寄せてくる感覚が理性を押し流していく。虜になってるのはわたしのほうみたい。突き上げる強さに負けて吹き飛びそうで、カイナッツォの腰に足を絡める。
「はぁッ、だめっ……もう、……あぁあっ!」
「ああっ、くそ……、起たなくなるまで、犯してやる……」
 なんかものすごく恐ろしいこと聞いた気がするんですけど。わたしの中に溢れ出してくる熱い感覚で頭の中がぐちゃぐちゃになる。何にも考えられない。掻き回されるままに身を任せて、そのまま溶けちゃえば、もっと気持ち良くなれるのかな。

「はっ、あ……くッ……サヤ〜」
 息も絶え絶えにカイナッツォが甘ったれた声でしがみついてくる。あまりの余裕のなさに思わず笑ってしまった。普段の姿からは考えられない……。
「てめ、笑うんじゃねえっ!」
「カイナッツォ、かわいい……」
「ッ!!」
 真っ暗な視界に仏頂面が見える気がした。しがみつく手足を引きはがされて、わたしの中を満たしていたものが乱暴に引き抜かれる。快感に引きずられて体が震えた。カイナッツォの腕がわたしの腰を掴んで、物のようにひっくり返される。
「お前な……覚悟しとけよ……」
「ひあぁっ! やッ、ちょっと……待っ、あんっ!」
「うるせえ、待たねえ」
 片手で腰を押さえつけられて動けない。中に吐き出された精を擦り込むように指で掻き混ぜられて、剥き出しになった突起を親指でぐりぐりと押し潰される。一度達して鋭敏になった感覚を激しく刺激されて、強すぎる快感に頭の中がスパークした。
「はぁっ、あぅ! ああっ、だめ……あぁんッ!」
「……なんつう声出すんだよ……オレおかしくなりそう」
「んんっ! あぐぅ……ふぁ、ああぁ!」
 言葉を返す余裕もない。突き上げられる動きから逃れようと腰を振り、次第に快楽を求める動きに変わる。羞恥心が溶けていく……。体温が混じり合ってカイナッツォの肌が熱い。もう二人でおかしくなっちゃいたい。後悔なんてあとでするものだから、今は何も考えない。

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