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実験台-火


 ルビカンテを見つけたものの声をかけられずにいる。べつに洗脳したからって変な命令する気はないし、ちゃんと説明して頼めばルビカンテは協力してくれると思う。けど……いや、だから? なんか気が咎めるんだよね。
「……サヤ、何か用なのか?」
「ほああっ!!」
 前方に見据えていたはずの人にいきなり後ろから話しかけられて、驚いてつんのめる。壁に激突しそうになったわたしをルビカンテの腕が引き寄せた。
「びっ、びっ、びっくりしたぁ!」
「それは見れば分かるが」
 ルビカンテが笑いを堪えるように横を向いた。なんか最近わたしのこと娯楽として扱ってない?

「あ、え、えっとね、これ、ルゲイエから頼まれたんだけど」
「なんだ、これは?」
 差し出した香炉を受け取り、くるくると回しながら不審そうに眺める。……匂いを嗅いだ人を自分の意のままにできちゃうお香なんだって。ルビカンテ、実験台になってくれない? ……言えないよ!
「実験データとってくるように言われて〜……」
「……一応仲間である者に対して言うのもなんだが、あまりルゲイエには関わるな。奴はその、まわりが見えなくなるタイプだからな」
 直属の上司にすらまったく信用されてないよルゲイエ。実験に打ち込むのもいいけどもう少し円滑な人間?関係にも気を配ろうよ。

「これは私が処分しておこう」
 言い終わるや否や香炉ごと爆破するように焼き尽くす。や、やっちゃった。そう言うルビカンテもけっこう後先考えないんだね……。一瞬あたりに強烈な芳香が漂った。思わずさっと口元を覆って、ルビカンテを窺う。
「……」
「ル、ルビカンテ?」
 香炉を破壊したポーズのまま茫然と立ち尽くしている。ひらひらと目の前で振ってみたその手が素早く伸ばされた腕に掴まれて、捩上げて背中にまわされる。拘束された腕ごと壁に叩きつけられて、したたかに顔をぶつけた。

「いたっ! ちょ、痛いよ!」
「サヤ、これは……どういう作用があるんだ」
 拘束の腕を緩めもせずに怒ったような声で問い詰める。そこからはいつものルビカンテらしい優しさが微塵も感じられなくて背筋を嫌な汗が流れた。
「匂いを嗅いだ人を洗脳する、催眠薬……って言ってたけど」
「そうか。妙だな……サヤの言うことを聞いてやろうという気がまったく起きないんだが」
「えええっ!」
「というよりむしろ……君を屈服させたくて堪らない」
 耳の後ろで低く笑う声に肌が粟立った。……これは一体だれなんですか? 騙して実験台に! なんてできないって思ってたけど、ちょっとした興味と悪戯心があったことも否定できない。だからもし本当にルビカンテが怒ってるなら、甘んじて受けるべきなのかも。だけど……これはホントにルビカンテなの?
「このまま犯して、屈辱に喘ぐ顔を見るのも悪くはないな……」
「ひゃうっ!」
 熱っぽい囁きのあと、ぬるりと耳を舐められる。縁をなぞりそのまま中に入ってきて、柔らかくて熱い感触がくすぐるように撫で回した。
「怖いか? サヤ……心配するな、痛い思いはさせない。……痛い思いは、な……」

 腕の拘束が解かれて体の向きが変えられる。ルビカンテと向かい合わせになって顔を見られずに俯いた。視界にルビカンテの腕が入り込んできて、わたしの目線の先で下着ごと服を引き裂く。洒落にならない状況にさしかかってるのに、怖くて逃げられない。
「っ! や……やだよ……ルビカンテ……あっ、んん!」
 無防備に曝された胸を熱い舌と指が責め立てた。乳房の間を舌が辿り、音をたてて吸い付く。掌で包み込み円を描くように揉みながら、人差し指がくにくにと乳首を転がし、ピンと張り詰めたそこを口に含んで甘噛みする。淡い刺激と触れてくる熱に頬が火照る。
「はぁっ……やっ、やだぁ……おねが、いっ……やめ、」
 押し退けようと肩に手をかける。瞬間ちろちろと舌先で責められて、体をはしった痺れに力が入らない。ぎゅっとルビカンテのマントを握って声を抑える。刺激が先端に集中しはじめて、子供が嫌々をするように首を振った。

「はぅ、んんっ……あっ、ああっ」
「随分感じやすいんだな。それともわざといやらしい声を出して私を煽っているのかな?」
「やっ、ちが……あんっ!」
 嘲笑を孕んだ言葉に反応して頬のあたりに熱が集まるのを感じた。人差し指と中指の付け根で中心を挟み込み、やわやわと刺激しながら全体を揉みしだく。反対側の乳房を円を描きながら舐めて、こっちは中心ぎりぎりのところを避けていく。絶えず与えられる甘い快感と、焦らされるもどかしさにマントを掴んだ指が震えた。
「わざとではないなら、サヤの体は根っから淫乱だということか」
 呟かれた言葉、身に覚えがあるだけに恥ずかしくて唇を噛む。飽きもせずに胸を責めていた指がするすると下半身に降りてきて、快感に濡れそぼった秘裂を撫でた。ぬるりと滑る感触に体が跳ねる。
「もうこんなに濡らしていたのか」
「あっ、んぅ! はぁっ、あぁん!」
 襞をなぞって指が行き来するたびに、そこからクチュクチュと湿った音が聞こえた。押し付けるように撫でていた指がするりと入り込んで、中から掻き回される。
「やけに簡単に飲み込んでくれるな。はしたなく絡みつかせて、恥ずかしくないのか?」
「アアッ、も……もう、あんっ、やだ……ああっ」
「嫌だと言うなら少しは抵抗してみせろ」
 辱めるような言葉にいちいち煽られる。これじゃまるっきり変態じゃん! 内側を擦りあげる指が二本三本と増えていく。バラバラのリズムが思考まで掻き乱した。押し広げられる痛みよりも快楽ばかりに気をとられて、消えてしまいたいほど恥ずかしいのに、ルビカンテの指の動きに合わせて誘うように腰が揺れる。体が自分のものじゃなくなったみたいだ。

「そんな物欲しそうな顔をして……指だけでは満足できないようだな」
「ああんっ」
 指がいきなり引き抜かれて、支えをなくしたように膝から崩れ落ちた。だらしなく開かれた膝を閉じる気力もない。腰の辺りで疼く感覚から必死で逃げながら荒い呼吸を整えようと上を向く。薄く笑ったルビカンテと目が合って顎を持ち上げられる。顔の前、息がかかるほど近くに熱く滾るモノが差し出された。
「どうすればいいか、分かるな」
 わかりません。むりです。ホント無理。ぜったい無理! 相変わらず言うことを聞いてくれない体はわたしの意思と正反対に、待ち構えていたようにそれを口に含んだ。広がる味に不快指数100%……。ルビカンテの手が頭を押さえていて吐き出すこともできない。息苦しさに耐え兼ねて動かした舌が、口の中のモノに絡み付く。
 自暴自棄になって預けられた熱を貪るように奉仕する。舌全体で撫でながら、飲み込みきれない根本を指でなぞる。唇で挟んで前後に動かし、先端を舌先で突くとルビカンテが苦しそうに呻いた。ちょっとだけ胸がすかっとして、唾液を絡ませながら必死に舌を動かしむしゃぶりつく。
「う……あぁっ、こんな、一体……どこで覚えて、きたんだ!」
 妙なところで怒る口調がいつもの保護者モードのルビカンテを思い起こさせてテンションが下がりかけた。我に返らないように口の中の脈動に意識を集中させる。
「サヤ……っ!」
 ルビカンテの手が頭を掴み、喉まで深く差し込まれる。ドクンと大きく脈打つと熱いものが吐き出された。むせ返りそうになって、苦しくて涙目になる。荒い息を繰り返すルビカンテは頭を押さえる手を離す気も口に突っ込んだモノを引き抜く気もないらしい。
 射精後とは思えない大きさのそれを頬張ったまま粘着質な液体を飲み下す。ゆるゆると喉を伝っていく感覚に吐きそうになった。もう誰が原因かは関係ない。正気に戻ったら無言で涙目で見つめまくって罪悪感を煽ってやる!

「……サヤ」
 呼吸も整わないうちにルビカンテがわたしの腕を掴んで引き上げる。壁にもたれ掛かるように立たせて足を割り、また指を差し入れた。
「さっきより濡れているようだが?」
「ああっ、んッ……ど、どうせわたしは……やっ、やらしいよ……こんなの、に……興奮しちゃう、最低なやつだよっ」
「私はそんないやらしいサヤも好きだよ」
 そっと囁いて口づけられる。自分のをくわえてた口によくできるなぁ、なんてとぼけたことを考える。変に優しい慰め。なんなのそれぜんぜん嬉しくない。ばか。ルビカンテのせいなんだよ。ばーか!

「さて……言ったことは守らなければな」
「あぅっ……な、なに!?」
 さっきより性急な動きで抜き差しされていた指が唐突に引き抜かれて、膝の下を掬うように抱え上げられた。ルビカンテに向かって足を開く格好になって、慌てて閉じようとした間にルビカンテの体が割り込んでくる。上体が傾いて壁にもたれ掛かった。どろどろに溶けだしそうな秘所に硬さを取り戻した怒張が触れる。
「君を犯すと言っただろう」
「や、待っ……あああッ!」
「く、っ……先に、言っておくが……これで終わりではないからな」
 そんな宣言聞きたくないよ! 入り込んできたモノの熱さに耐え兼ねて、足をルビカンテの腰に絡める。肩につかまって這い上がろうともがく。浮き上がった腰が、ずるりと抜かれるときの快感に負けてまた沈み込む。背後の壁に倒れかかった体を支えるようにルビカンテの手がお尻を掴んだ。
「サヤ……そんなに、煽るな」「ち、ちが、ぅん……ああっ、んッ! はぁっ、あぁん!」
 快楽から逃れようとした動きをルビカンテは逆方向から受け取ってしまったらしい。突き上げる勢いが激しすぎて、しがみつくだけで精一杯になる。

「あっ、あぅ、だめっ! こんな、ああッ!」
「これぐらいで、参っていたら、……身がもたないぞ」
 そんな変な持久力はいらないってば。たっぷり馴らされたからか、はたまた麻痺してるのか、痛みは感じなかった。揺さぶられるたびに頭の中に火花が飛ぶ。ルビカンテの熱に内側から焼かれそう。
 このまま溶けだしてもちゃんと支えててくれるのかな、って心配になってきたとき、耳元で囁く声。
「サヤ……絶対に、離さない……」
 通じ合うものに嬉しくなると同時に、ふっと疑念が浮かんで、答えを考える間もなく快楽の波に打ち消された。ねえルビカンテ、もしかして最初からわかってなかった?

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