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鷹-1


 どこからか聞こえる小さな声で目を覚ました。背中から硬い感触が伝わり、ソファーに腰掛けたまま居眠りしていたことに気づく。まだはっきりしない頭で薄く目を開けて、胸の辺りに妙なくすぐったさを覚えて体をよじる。
「ん……ふ、あぁッ……えっ?」
 突然駆け巡った快感にのけ反って、先程から聞こえていた声が自分のものだと知った。驚いて見下ろせばきっちり着込んでいたはずの服は上下ともに剥ぎ取られ、僅かに残された薄手のシャツも肩まではだけられている。
 無防備に曝された胸を血の気が感じられない白い手が弄んでいた。腰掛けたままのサヤの膝を割って体を入り込ませたルビカンテが、背もたれに押し付けるように体を寄せて、反対側の胸に口付けを繰り返す。

「ようやく目覚めたのか」
「な、なんっ……んんッ!」
 なぜ、何をしているのかと怒鳴ろうとした口が、ルビカンテの与える快楽に遮られた。
 既に起立している乳首を口に含み、舌先で転がしながら乳房を吸い上げる。一方で持ち上げるように支えられた胸が手の平全体でこね回され、絶え間無く続く刺激に寝起きの思考がついていけず、訳も分からないまま身を任せた。
「はぁっ、……あ、あんっ……ん、んむぅ」
 乳房を離れた唇がサヤのそれに重なり、舌が捩込まれる。未だぼやけた頭を必死に働かせて押し返そうともがくが、なおも胸を揺らす両手の動きに気を取られてうまくいかなかった。
「んっ……ふぅ、う……」
 好き放題に口内を舐めつくした舌が未練がましく糸を引きながら離れると、サヤの唇を軽く掠めて首筋に移動し、何度か肌に吸いつきながら耳元で名前を呼ぶ。
「サヤ……」
 赤い跡を残す小さな痛みとその声に篭る熱で、ようやく芯から覚醒した。自らの有様と現在の状況とこれから何が起きるのかと、一瞬で思考が混ざり合い、胸元からカッと赤く染まる。

「ちょっ、ちょっと何やって、んんッ……あ、あッ! やめっ、」
 問いに答えることもなく淡々と事を進めるルビカンテの手は、態度と裏腹にあまりに熱くサヤを乱した。
 先端で小さく尖る乳首を摘まれ、反らせた胸には執拗に口付けられる。起こるはずのない事態と誰よりも安心感のあった相手の暴挙に、サヤはますます混乱を深めた。
「やめ……やっ、ああぁっ!」
「いい反応だ。ここが好きなのか?」
 言いながら胸を揉む手に力が篭り、指の付け根で先端を挟み込みながら揉みしだく。その間にも首筋、鎖骨を辿る唇が、噛み付くように強く皮膚を吸い、所有の証を残していった。容赦なく責め立てられ、サヤはなすすべもなく喘ぎ身悶える。
「あぁッ……んっあ、ぁう! はぁっ」

 再び胸元に集中し始めた唇が先端を挟み、コリコリと転がしては舌でつつく。理性を取り戻そうとでもいうようにサヤが首を振り、それに微かな笑みを返して空いた手が下腹部へと伸ばされる。
 てらてらと濡れた割れ目にルビカンテの指が差し込まれ襞をなぞるように前後すると、溢れた愛液が掻き回され卑猥な水音を立ててサヤの聴覚を犯した。
「随分感じているな。人間とは皆こういうものか?」
「ッ……やだ、ぁあっ!」
 魔物である彼にしてみれば過敏に反応を返す体がただ珍しく、厭味や嘲笑の意味などなく単なる感想として発した言葉だが、サヤの脳裏にはこの上ない責め苦として叩きつけられた。
 羞恥に頬を染める仕種が新鮮に映り、気をよくしたルビカンテは屈み込んでサヤの秘裂に口付ける。そのまま舌を這わせ、中心をくすぐるように舐め回した。
「ああぁっ、やぁ、んんっ! ふぁ、あっ!」
 一際強い刺激に怯えたサヤがソファーの肘掛けを掴んで腰を引こうとするが、深く腰掛ける程に追い詰められ逃げ場をなくした。

 自身の内から沸き上がる快感に焦り、恐怖する。それを宥めるように、また煽るように、入口を撫でていた舌が奥へと差し込まれた。水を舐めるような音が徐々に粘り気を帯びはじめ、響く音が大きくなるにつれサヤの耳元に熱が集う。
 最後にぐるりと円を描いて内壁を舐めると舌を引き抜き、余韻にひくつくそこへ今度はゆっくりと中指を沈めた。
「い……ッ、んくぅ!」
 舌とは違う固い異物が入り込み、体内で蠢く指にサヤが眉を寄せる。構わず根元まで指を飲み込ませると、内側から腹を撫でるように少しずつ指を曲げ、僅かに前後させ始めた。
 指の腹が内を掻くたびじわりと愛液が溢れ出し、それを自覚して慄く。嫌がらなければならないのにこの様は何だと、違和感が快感に変わるごとにサヤの体が震えた。
「っもう……やめ、やっ……あぁっ、」
 涙を滲ませ懇願した言葉は、帯びた甘さのせいで拒絶には聞こえなかった。サヤの中を擦りつける動きを速めながら屹立した突起に口付け、溢れてくる愛液を塗り付けるように舌で撫でる。肌へと押し付け、吸い上げては弾く。

 思考を溶かす勢いの愛撫に流され、抑え切れない声をどうにか抑えようと自分の手で口を塞ぐ。それでも漏れ聞こえる嬌声はルビカンテを煽り、秘所へ差し込まれた指は二本に増えた。
「んっ、ふぅ……んくっ、うぅ!」
「抑えるな、サヤ……もっと……」
 熱に浮かされた声に目を見開く。するりと抜き取られた指に身震いして、次いで覆いかぶさってきた体に青褪めた。
「待っ、待って……やだ、いや、」
 か細い声を気に留める事なく、張り詰めた陽根を押し当てると躊躇なくサヤを貫いた。
「──…………ッ!!」
「っ……流石に、きついな……」
 痛みのあまり口に当てた手を噛み締め、歯が皮膚を破り血が滴る。恐怖と怒りと苦痛で頭が真っ白になった。自分を犯しているルビカンテへの失望と、望まない行為に快感を得てしまった屈辱で涙が流れる。
「サヤ」
 ルビカンテもまた、彼女と自分の間にズレが生じていることを知らなかった。噛みついた跡から滲む血には気づいたが、自身が押し開いた秘所から流れるものには気づかなかった。
 サヤの手を握り、血を舐めとって魔力を注ぎ傷を癒すと、涙の溢れた目尻に唇を寄せる。
 痛みは体格差のせいでしかなく、続ければじきに薄らぐと思っていたし、黙っているのは受け入れたからで、サヤ自身がルビカンテを求めていると信じていた。内面の弱さを知りながら、その脆さにまで気が回らなかった。彼女の内で傷つき壊れたものがあると気づかなかった。

「サヤ……、少しだけ我慢してくれ。すぐに気持ち良くなる」
「っ、いや……!」
 膝を抱え上げられて、腰を押し当てるようにしてゆっくりと掻き回される。停止した思考が動き出した。体の中心から広がる違和感。そこに絡みつく重い痛みと、埋め込まれた塊の熱さ。
 本来なら心から望んで受け入れるはずのものが、強引に開かれ、しかし引きずられるように快感を得ている事実。
「いっ……あぁっ! はぁッ、あ、あっ、ああぁっん!」
 小さく優しかった動きは徐々に鋭く、大きくなった。突き上げられるたびサヤの自尊心が崩れてゆく。自分の口から甘く甲高い声を聞くたびに縋るものをなくした。
「い、いた……あぅッ、やめ……あぁっ! やだぁ、あぁっ、あんッ」
「はっ……はぁっ……く、うッ……」
 いま目の前にいるのが誰なのか分からなくなった。ルビカンテはサヤの頼るべき存在だった。守って、導いて、助けてくれる存在だった。好意しか持っていなかった。安心感しか抱いていなかったのに。
 ではこれは誰なのか。欲情に染まり、優しさのかけらもなく、サヤの存在を打ち砕いて肉の塊を犯しているのは、ルビカンテであるはずがなかった。
「サヤ……」
「あぁッ、やっあぅ、ん、ああぁっ!」
 微かに聞こえた声に、助けを求めるように手を伸ばし、目の前の何かにしがみついた。

「あっ、くぅっ、ルビ、カンテぇ……たす、助け、あ、あっ」
 求める声に応じて膝を抱えていた腕がサヤの背中にまわされ、強く抱きしめた。全身を擦り合わせるように揺さ振られて、密着した胸が揺れるたびに先端が肌を掠める。触れ合う熱が互いを煽った。
 結合部から流れ出た体液がサヤの内股を伝って水溜まりを作り、二人の動きに合わせてギシギシとソファーが軋んだ。水音と、肉のぶつかる音。湿った匂い、嬌声。淫猥なだけの空間を引き裂くように、一際大きな悲鳴が響いた。
「も、やだ、っあ、あ、あっだめぇ、ああぁっ……!!」
 様々な感情がないまぜになり、すべて消えた。くわえ込んだものを離すまいと内壁が締まり、そこにあるものが強く脈打つのを感じたところで、サヤは意識を手放した。

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