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変態
塔のお風呂はわたしのようなごく普通の一般人にもとても馴染みやすい。庶民的とでも言おうかな、なんとなく親しみを感じる。分かりやすく言うと……狭い。ボロい。小学校の修学旅行で泊まった安宿のお風呂を思い出すよ。
さすがにわたしの家のお風呂よりは広いんだけど、なんかもっとこう、高い天井! 謎の天使像! ライオンの口からお湯がだばだば! みたいなのを想像してたんだけどなぁ。使う人が少ないから仕方ないのかな。足を伸ばしてゆったりくつろいでると、そんなことどうだってよくなるけど。
口の上ギリギリまであったかいお湯に浸かって、目を閉じる。ぼんやり今日の出来事なんか思い出しながら、うつら、うつら。
「サヤ、溺れるぞ」
「……がぼっ!? 、ぐ……げほっ、ごほっ! な、なんでいるの!? 水に入っていいの!?」
「水ではなくて湯だ」
いや、そういう問題じゃないし! 現実が衝撃的すぎて一瞬沈みかけた。目の前にルビカンテがいる。しかも全裸で。ありえなかった。バルバリシア様ならともかくルビカンテはありえなかった。
ああ……そ、そっか。夢か! くつろぎすぎて寝ちゃったんだね、わたし。夢だからルビカンテがお風呂なんかにいるんだ。なんだ、そうだったんだ。よかった。……よかったのかな?
「だい、大丈夫なの?」
「気を張っていればこれくらいどうということもない」
「そ、そーなんだ」
あれ? お風呂ってそんなふうに頑張って入るものだっけ……。
「サヤの裸が見たかったんでな」
え、爽やかにものすごいこと言ってるよ、この人。
「人間の体をじっくり見る機会などないからな」
そうだね、人型だってモンスターなんだもんね。どこがどう違うのか、知りたいかもね。でもこういう状況はいくら夢でも遠慮したいかな。一応わたし嫁入り前の娘なんだし、人外とはいえルビカンテも見た感じ普通の男の人だし。
「じっくり見られるのはイヤかな〜〜」
「なら、触ってもいいかな?」
「いいですと……いいわけないよ!」
「なぜだ?」
なぜって! ルビカンテこそなぜ本気で不思議そうな顔してるの!? やっぱりなんか、変だ。
「これ、わたしの夢だよね?」
こんな変態な紳士が現実だったらいやだな……。わたしの言葉にルビカンテはちょっと驚いて、そのあとニヤッと笑った。その不気味な笑顔は一体どういう意味ですか。
「……そうか。そうだな、これはサヤの夢だ」
そう言ってわたしに手を伸ばす。腰を掴んで抱き寄せられる。そうだな、って返事はおかしいよ。夢って、一体どこからどこまで夢だったの?
「サヤ……」
密着状態で名前なんて囁かないでほしい。無駄に体温が上がっちゃう。ルビカンテの肌はなんだかいつもより冷たく感じた。少しだけ頭が冷える。
「ちょっ、ちょっと待って! なにこの展開? いくら夢だって……」
ルビカンテは聞く耳持たずにわたしの体を撫で回してる。逃げようするのに左腕一本でがっちり固定されてて離れられない。腰や背中の辺りを這いまわっていた右手がわたしのお腹にまわり、少しずつ上がってくる。
「んっ……わああ待って待ってダメだってば!」
「何が駄目なんだ」
「なにっていうか、もう何もかもがダメだよ!」
「クッ、」
どーしてそこで笑うかな、ぜんぜん笑えない状況なんですけど。
「心配するな……ちゃんとお前も気持ち良くしてやる」
「やっ、いらないから! おまえもわたしもだれも気持ち良くなくていっ」
必死の訴えはルビカンテの攻撃の前にあっさり撃沈した。大きな手の平でわたしの胸を揉みしだきながら、反対側の乳房を舐める。なんか段々遠慮なくなってきてるよ……。
「はぁっ、はっ……なんかクラクラする……」
「逆上せたか?」
「あぅんっ……ぜ、絶対そのせいだけじゃな、い」
抱え上げられて湯舟の外に寝かされる。お湯の中では感じられた、隠れているというほんの少しの安心感までなくなって、無防備にさらけ出された体にルビカンテが覆いかぶさる。両手の指で乳首を摘みあげられて刺激に体がのけ反り、支えを求めて思わず目の前の体に抱き着く。
「だったら、何のせいなんだ……?」
「アッ、ん……はぁッ……やっ、もぉ……」
ルビカンテの指が執拗なまでにコリコリと乳首を転がす。これは夢、だからべつに、いやよくない……だめ、考えられない。背中から伝わる床の冷気が目を覚ませって訴えてくるのに、胸から首筋、耳元まで舌が這い上がってくる。その動きに思考が乱される。
「サヤ、感じているんだな」
名前を呼ぶときだけ耳元で囁かないで。体中沸騰して心臓が爆発しそう。ルビカンテの指が離れてようやく一安心、と思ったのに。
「アアッ! そこ、だ、めッ……」
離れた指はわたしの足の付け根にたどり着き、その一番奥にぐりぐりと押し付けられる。もう少しも待ってくれないみたいだ。すぐに中まで入ってきて、内側を指の腹で撫でる。
たまらなくなってルビカンテの首の後ろにまわした腕に力を込めた。乳房がルビカンテの胸にくっついて形を変える。動くたびに肌が擦れて、これじゃ余計に変になっちゃう。
「サヤの体は淫乱だな。ここからいやらしい汁がどんどん出ている」
「っは、あン! ルビカン、テ……おやじ入ってるっ、ぁふ……んんぅ」
真っ直ぐ見つめ合いながら二本、三本と増えていく指で掻き回す速度を上げていく。下半身から聞こえる卑猥な水音と自分の嬌声が、お風呂場の壁に反響して数倍になり返ってくる。煽らないで、もう余裕ないんだから!
「サヤ。まだ痛いかもしれないが……いい、よな」
「んんっ、はぅ……えっ?」
いいよな、ってよくないよ! 抗議に出る間もなく指が引き抜かれて、かわりに熱いものが当たる。ルビカンテの腕にぐっと力がこもり、胸元の筋肉が動くのを肌越しに感じた。何かが一気に突き抜けていく。指なんかと比べ物にならない大きさでわたしを満たしていく。気持ちいい……って思ったのは一瞬で、あとは。
「っぎにゃあああああ!! やだむり入るわけないよもうだめお願いどうにかして!」
「くっ……お前、もうちょっと色気のある声をだな……まあ、無理か」
なんだか勝手に納得して、妙にあっさりと腰が引いていく。体内を満たしていたものがずるりと引き抜かれて、体が裏返りそうな感覚に怖くなって涙が出る。わたしの中身がぜんぶ一緒になくなっちゃいそうだよ。
「ああっ、あん! 動か、ないでぇ! 抜い……はぁっ、やだぁ……」
「馬鹿、泣くな……抜きやしねえから」
先端だけ抜かずに残して、ゆっくりと浅い挿入を繰り返す。痛いのと気持ちいいのがぐちゃぐちゃになってとけていく。痛みの赤と快楽の白……混じり合って頭の中までピンク色だ。なんか大事なこと見逃してる気がするのに、わたしの中でうごめくモノの感触が考えることを許してくれない。
「はあっ、ああぅん! アッ、うぅ……なんか、んっ……やっぱりなんか、変だよぉ」
「細かいことは気にするな」
ぜんぜん細かくなんかないと思う。すっごく重要なこと……。この快感、この痛み、やっぱり夢なんかじゃない? ってそれもあるけどそうじゃないんだよ。
「考えるなっつーの。……余裕出てきたみたいだな」
「あああああッ!!」
何かわかりかけた一瞬に貫かれる。今度は止まらない。入口から奥まで、そこからまた一気に引き抜く。撫でるように押し付けるように角度を変えて攻め立てる。肉がぶつかる音。繋がった部分から二人分の体液が流れ出て、その感覚がまた快感を呼ぶ。水音。変だよこれ。ちがう、最初から……。
「あっ、くうぅん! ぁあう、ダメッ、も、」
「イけよ、サヤ」
「だめぇっ、ちゃんと、かんがえな……あん、んっ!」
「……あー、仕方ねえな。じゃ、考えな。オレは誰だ?」
だれ? いまつながってるひと。わたしのなかをいっぱいにしてるひと。抱きあっててもまだ少しつめたい肌。からかうような口調。わたしの意思は完全無視の勝手なやつ。でも最後の最後でちょっとだけ優しい……こ、この変態ぃっ!!
「アアッ、あっ、ばっ……カイナッツォのバカァァ!!」
「く、うっ……よくできました」
ああ、やっぱり考えるのはあとにするんだった。恥ずかしくて気持ち良くて腹が立って、燃え尽きた……真っ白に。起きたらぜったい、ぜったいに殴ってやる……!
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