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エジルビ

 思慮深く見えて意外と考え無しだ。直感に自信があるのか、反射で動いて何とかしてしまうから凄いっちゃ凄い。そのルビカンテが今は何か考え込んでる。
「何やってんの」
 返事がない。集中すると周りが見えなくなるな。
「あんまり無防備だと襲うぞー」
 言葉に反して少し離れて声をかける。いきなり抱き着いたら手痛いしっぺ返しが来ると最近は学習した。反射的に出た攻撃だと加減してくれねえんだよな。
「何の用だ」
 愛想のない声だ。振り返った瞳は珍しく困惑してる。
「何を悩んでんのかと思って」
 ほっとくといつまでも考えてる。オレの知らない間に、あんたの中だけで何か完結しちまいそうで怖い。

「……どうすればお前が諦めるか考えていた」
 そうやって終わらせることばかり考えるのは何故だ。望んでるわけでもないのに。
 未来に展望なんか開けねえよ。数え上げるのも馬鹿らしいほど問題だらけだ。恋してるなんて口に出していいのかも分からねえ。
「想像以上にしぶといな。お前には何か案があるか?」
 だからってオレ本人に聞くなよ。残酷な奴だ。悪気がないから怒れもしない。
「そうだな……オレはあんたのあんたらしさに惚れてるんだから、『らしさ』がなくなりゃいいんじゃないか?」
「私らしさか……」
 マトモに返すオレも何だかな。主導権握ってりゃ良いように持ってけるってのもあるが。……そうか。黙っていなくならないのは、こいつだって離れられないってことだな。
「何をニヤニヤしてるんだ」
「いやぁ、別に」
 不審そうに首を傾げてまた思考に沈む、その顔が好きだ。段々と表情が消える。頭の中がオレで一杯になる。
 自信過剰のあんたが、慣れない恋愛に関する……つまりオレに関する悩みにとらわれた時だけ頼りなくなる。
「エッジ、私を捨てないでくれ」
「…………」
 ちょっと待て、何だって?
「……らしくない事を言えと言うから」
「いや分かってるけど」
 分かってるけど驚いた。その、一生懸命やってんのにズレてるとこも好きだ。じゃなくて。
 確かにらしくねえけど、それは駄目だろ。

「もっかい言って」
「私を……もういい、何か違うようだ」
「そうだな、どっちかというと逆効果だし」
「逆……?」
 捨てる気なんか無いのに捨てないでなんて言われたら。憎らしいぐらい強気な奴に、弱味を曝されたら。
「お望み通りずっと傍にいてやるよ」
「何故こうなった……」
 本当に何やってんだか。

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