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エジルビ

「なあエッジ、知っての通り私は魔物なんだ」
「うん、だから?」
 何だその軽い返しは。葛藤は無いのか。積もった恨みは何処へ消えた。
「お前の敵でもあるはずなんだが」
「うん、それで?」
 だから。魔物と人間が、殺す者と殺される者が、……恋愛するのはおかしいだろう?
「あんた考えるの好きだなぁ、オレにゃ絶対マネできねえ」
 お前こそもう少しよく考えた方がいいぞ。立場というものがあるだろう。私が言えた義理でもないが。

 ……どうしてこうなってしまったのだろう。ただ少し興味を覚えて、引き込まれて、いつの間にか……生死の境を越えるほど強く、
「考えてなんかいいことあんのか? 先のことなんて分からねえだろ」
 強く、惹かれてしまった。私の手を取り走る彼を、止められなかった。
「男なら行動あるのみだ!」
「……男らしいな、お前は」
 美徳どころか厄介だとさえ思うのに、褒められたのが余程嬉しいのか、恥も外聞もなく飛びついて来る。
 そんなに真っ直ぐな好意を向けられると、どうしていいか分からないじゃないか。
「あんたが好きだ、ルビカンテ」
「……どうやら私もそうらしい」
 考えるのが馬鹿馬鹿しくなるほど断絶は深く、乗り越えねばならない葛藤はあまりに多い。にもかかわらず、これが幸せなのかもしれないとさえ思うのは。……魔物としては狂っているとしか思えないな。
「なあ、名前で言ってくれねえか」
「エッジ、お前を愛している」
「ありがとう。押し倒させてくれ」
 傷つけまいと気遣って、理性を失うことを恐れていたのに。もう目を逸らすこともできないほど隅々まで知り尽くしている。
「あっちいいぃい!」
 ……例えば、どの程度の炎なら死なないのか。

「……あの、ルビカンテさん、回復してくれませんか」
「白魔法ぐらい覚えたらどうだ」
「そりゃ無理ってもんだ」
「試しもせずに諦めるのか?」
 その挑戦的な笑顔も、向けるのが人間の女ならば喜んで寄ってくるだろうに。何故私なんだ? それを喜んでしまうのが何か悔しいな。
「オレが覚えちゃったら、あんたに回復してもらえねえだろ」
 くだらない感情だ。どうせ一時のものに過ぎない。未来などありはしない。私は魔物で、彼は人間なのだから。
 最初から終わりが見えているのに、それさえも彼は「うん、だから?」で済ませるのだろうか。酷い話だ。こんなにも、追いかけて逝きたいと思っているのに。

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