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ベイカイ

 珍しくも陛下の側からの御召しだった。常ならば私が勝手にお傍に侍り、尚且つ迷惑がられて追い出されるのだが。
「おい、なあベイガン」
「はい」
 しかも役職ではなく名前でお呼びになるとは。どういう風の吹きまわしだろうか。天変地異でも起きるのか?
「……クソ寒い。寝ちまいそうだ、何とかしてくれ」
「はあ……。今年は例年稀に見る寒波だそうですから」
 ある意味ではそれも天変地異だな。陛下のせいというわけではないのだが。しかし私にどうしろと言うのだろうか。天候を操る能力など持ってはいない。
「何でもいいから暖かくしてくれ」

 どうやら寒さでなりふり構わなくなっているようだ。今なら何を言っても許されるかもしれない。
「試しに抱き合って温め合いましょうか?」
「阿呆か、余計寒いわ!」
 それもそうだな。残念だ。私も陛下も変温体質であるのだから、抱き合ってみたところで互いに益々寒くなるだけか。私はそれでも構わないのに。……やはり他の魔物に変えてもらうべきだったな。
「いや、それ以前の問題だろ……。つうかお前、それ気に入ってねえのか?」
「そういう積もりはありませんが」
「なら滅多なこと言わん方がいいぜ。喜び勇んで改造しに来そうな野郎もいるしな」
 されて力が増すならば幾らでも改造されて構わないのだが。幸い私は他人から得た力であっても気に留めずに利用できる。何処かの誰かと違って無駄な自尊心など持ってはいないからな。
 それよりも、陛下はもしや私を心配して下さっているのだろうか。そうならばやはりこの異常気象も陛下のせいかもしれない。
「んなわけあるか。心配なんかしてねえ」
 寒さのせいか、怒りにも力が無い。これは寂しいことだ。陛下を怒らせるのが私の楽しみの一つだと言うのに。

「……ああくそ、もう一生寝ときてぇ」
 それは死んでいるのと変わらないように思うのだが、この方の場合はそれでも構わないと言いそうだな。
 我等はあまりに寒いと動こうにも動けなくなる。何か仕事が必要だろうか。
「嫌だ働きたくねぇー」
「……陛下」
「何笑ってんだよ」
 そんな台詞に微笑ましさを感じてしまうのだから相当に惚れているようだ。
「私とひなたぼっこでもしますか?」
「あー……結局そこへ落ち着くんだよなぁ」
 しばらく陽光を浴びていれば、この寒さの中でも体温を上げられる。まあ、一国の王とその近衛が城のバルコニーで日光浴、というのも間抜けな光景ではあるが。
「……だからなんで笑ってんだよお前は」

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