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ゴル×土

 忠誠よりも心がくすぐられる。覗くごとにむず痒いような心地よさがある。
「愛しているぞ、スカルミリョーネ」
 びくりと震えてそのまま石化する体を見遣り苦笑した。うろついていた適当なモンスターを呼びつけてエスナをかけさせる。
「大丈夫か」
「は、はい……」
 虚ろな瞳、泳ぐ視線。その余裕のなさにまだ悪戯心が収まらない。
「……好きだ」
「お、お戯れを」
 いつもの無表情が崩れ去り、心底困ったような顔。無防備極まりなく、ついからかいたくなる。腹の底から喜びが沸き立つ。
「身も心も私のものになる気はないか?」
「もう、どうか、お許しを……」
 最早スカルミリョーネは平伏しそうな程に焦っていた。それでも尚。
「ほう? 断られるとは思わなかったな」
「そ、そうではなく」
 分かっている。言葉で確かめずとも、始めから私のものだ。それでも言わせてみたくなる。全て意のままに……してみたくなるのだから、仕方がないだろう。

「お前は私が欲しくはないのか?」
 尋ねた瞬間、スカルミリョーネの心が弾けるのを感じた。求めれば応じるだろう。深い関わりを恐れ、避けながら、私が望めば躊躇なく差し出すのだろう。
「甘すぎる」
 私に対して。許せば許しただけ付け上がるぞ。壊れたくないならばあまり私に気を許さぬことだ。……それともお前は、私のために壊れることさえ、幸福と呼ぶのか。
「この身は、あなたのためだけに、あります……しかし、」
 触れることを嫌う。近づくことを厭う。愛することを恐れる。私にならば捧げられるというのは、私からならば与えられはしないと……安堵しているのではないか。不意に腹立たしさが沸き上がる。
 覆い隠していたローブを払いのけ、呆然とするスカルミリョーネを引き寄せる。
「ゴ、ゴルベーザ様!」
 それは非難か、羞恥か、ただの恐怖か。いずれにせよ脆弱な拒絶では意味を成さない。

「お前は愛らしいな」
 愕然とした後、ぶんと音がしそうな勢いで顔を背けた。どうやらショックを受けているようだ。
 強張り冷たくなった外面を剥げば、甘く繊細な内面が見える。スカルミリョーネが自ら嫌悪しているその肉体も、中身が見えてしまえばそれを引き立てるだけだ。手を伸ばしたくなる誘惑が抑え切れない。衝動を掻き立てられる。
「……あなたを、汚したくはない」
 何を以って私が汚れていないというのだろうな。闇に魅入られるほどの憎悪に塗れたこの私を。
「……お前は愛おしいな」

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