ふらふら


 なんだかふらふらする。視界が揺れてよくいろんなところにぶつかる。足元の石ころを感知し損ねるのも、それに蹴っ躓いて転ぶのも、普段なら起こり得ないことだ。なのにそれが起こってしまった。
 一瞬、認識できたのは金色だった。それが何かを考える間もなく床が迫って、全身に衝撃が「ぐべっ」走るかと思ったけどなんかクッションがあった。
「ン……?」
 見下ろせばコレットを下敷きにしていた。さっき見えたのはこれだったのか。

「か、カフェオレ……」
 なんで赤くなってるんですかこの子。
「どうぞ……!!」
 いや、何がだよ。

 無駄に幸せそうなコレットをいろんな意味で心配するのはやめて、なんとか体を起こそうと試みた。彼女の腰の両側に手をついてふと気づく。
 ああこれ。完全にオレが押し倒してるな。
「ウウゥ」
「だ、大丈夫カフェオレ!?」
 いろいろと大丈夫じゃないけどそんなつもりじゃなかったと言い訳するのもカッコ悪い。黙っとこう。

 自力でオレの下から脱出したコレットに助け起こされてようやく立ち上がった。途端に立ち眩み。何なんだ? キルシュに風邪でも移されたかな。いやでもバカは風邪ひかないって言うから違うだろう。もし万が一バカじゃなかったとしてもロボットのオレには移るまい。
 ぐだぐだ考えてたらコレットが心配そうに覗き込んでいた。路上で押し倒されたことなど気にも留めず真面目にオレを案じてくれる顔が、ちょっと可愛く思えた。
「調子悪いの?」
「ア〜、少シダケナ」
「部屋まで送るよ」
 それ普通は逆だろ……とはいえ本当に調子が悪い。故障だろうか。お言葉に甘えて部屋に連れてってもらったら、軽くメンテナンスしておこう。
「それともマドレーヌ先生に見てもらう?」
「ソレダケハイヤダ」
 考える前に返事してしまって、コレットが笑っていた。マドレーヌ先生に任せると直すだけじゃなく余計なことまでされそうだからな。
 それになんとなく、もう少し調子悪いままでいたら、うっかり良い目を見れるんじゃないかと思った。




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