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 風がふいてローザの髪が揺れる。それを見つめるサヤの瞳はまるで、長く会えなかった恋人を見るように……女の子相手に、僕は一体なにを考えてるんだろう。サヤがローザを見る目はなんだか僕のそれと似ている気がして、妙に焦る。
「サヤは、その……同性が好きだったり、するのか?」
「……はぁっ!?」
 傍らで二人を見つめていたカインが、束の間茫然としてから我に返ってのけ反った。
「そんな馬鹿な……いや、ないとも言い切れんが……」
 カインの目が何かを思い出すように細められる。心当たりがあるのか……。些細な嫉妬心にすぎないと思っていたのに、ほんの少しでも可能性を示されると不安が増してしまう。
「……だがあれは、違うと思うぞ」
 そう言ってローザたちを指す。さっきよりも強い風がふいて、ローザが髪を抑えて目を閉じる。サヤの視線がそれを捉えて、痛ましげに顔が歪んだ。
「風が止むまでには、まだ時間がかかる」
 それだけ言うとカインは口を閉ざしてしまった。金の髪が視界の端でちらちらとそよぐ。カインはサヤを知っている。ローザも、ゴルベーザのもとで彼女がどう過ごしていたのか、その目で見ていたんだ。
 でも僕は……。

「セシルのこと憎んでもいい?」
 抑えた想いが溢れてこぼれたような声。思わず辺りを見回したけれど、サヤは相変わらず遠くでローザを見ている。幻聴だ。ホッとため息をつくとカインが不思議そうに僕を窺っていた。
「……なんでもないんだ」
 サヤの存在が遠い。間近で話していても、僕とは相容れないと拒絶されている気がする。ローザから視線を逸らしたサヤが僕に気付いて、ぎこちなく微笑んだ。
 受け入れたいと、二人とも願ってるのに、それは痛いほど自覚してるのに……。この距離を縮める勇気がない。
 責めるように風が頬を叩いた。サヤの眉が何かを堪えるようにしかめられる。きっと僕も同じ顔をしてるだろう。彼女が何を思い出し、何に傷ついているのか、僕は知らない。
 ただ奪ったのは僕なんだと、その事実だけがいつまでも胸に響いている。

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