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視覚感知範囲内

 前方にスカルミリョーネを発見しました。途方に暮れているようです。うーん、違うか。苛々してるようにも思える。ここからじゃ顔が見えなくて、よくわかんないや。
 とにかく動かない。わたしを探そうって気はないのかな。見えないとこで死んじゃったらどうする気? ……手間が省けてラッキーとか思われそう。なんか落ち込むなぁ。
 はぐれたんだから、せめてキョロキョロするとかさ。ああっ、座り込んじゃった! 完全に捜索の意思なし! くそう……。
 とりあえず、どうしよう。ちょっと慌てるとこでも見てから爽やかに登場して驚かせようと思ったのに。スカルミリョーネめ。ここでへらへら笑いながら戻ったらアホみたいじゃん。絶対、鼻で笑う。「生きていたのか……残念だ」とか言う。間違いなく言う。
 かといって意地になって隠れ続けても、置いて行かれそうだし。ゴルベーザに平然と死亡確認されたらどうすりゃいいの?

「ぐぬぬぬ……」
「……いつまで隠れている気だ」
「のああっ、な、ん、後ろからバックアタック!?」
「前からバックアタックできるわけないだろう。馬鹿か」
 そんなことわかってますう。なんで後ろから現れるんだよバックアタックかよって言いたかっただけですう。……びっくりして変になっちゃったんだよ! 悪いかっ!
「なんでここにいるのわかったの?」
「見えるだろう」
「見えないよ普通」
「そうか」
 いや、そうかじゃなくて。疑問に答える気ないんだね。さっきまでスカルミリョーネがいたところを見る。……絶対わかんないって! 遠いし、こっち斜め後ろだよ? しかも茂みに隠れてるのに! 気づかれないように距離をとるの、どれだけ苦労したと思ってんの。
「……もしかして、離れようとしてた時点で気づいてた?」
「いや。サヤがいないのに気づいたのはついさっきだ」
 それはそれで悲しいね。ちょっとくらい気にしてよ。保護者って意識はないのかな。ないか。ないよね。わかってる……。
「……何を落ち込んでいるんだ」
「スカルミリョーネって……わたしがいなくなっ、なってほしい?」
 いなくなっても驚きもしないんだねって、聞こうとしたのに。途中で変わっちゃった。ダメだよ、こんな直球勝負じゃ、また落ち込むのは目に見えてる。
「……心配させるなとでも言ってほしいのか」
 なにそれ、結局どっちなのか答えてない。心配なんてしてないくせに。そんなこと、
「口がもげても言わないくせに」
「隠れるところが見えたからな」
 だから、変だってば。振り返りもしなかったじゃん。どうして見えるの? 最早人間じゃな、……うん、人間じゃないんだった。

「ねえ、振り返らないでね。これ何本?」
 スカルミリョーネの顔の右斜め後ろで指を立てて手を揺らしてみる。まったく動かないままあっさり答えられた。
「2本」
「……見えるんだ」
「そう言っているだろう」
 恐ろしい。気配も読めて視界も広くてあっという間に距離を詰められる。わたしなんかどう足掻いても逃げられないね。逃げても追いかけてもらえないのが、一番こわい。
「……今度はもっと見晴らし悪くて入り組んだとこに連れてってよ」
「勝手にうろちょろしないと約束するならな」
「それは断言できない」
「……………」
 少しだけわたしに顔を向けてからすぐに戻して、あからさまに重い溜め息をついた。厭味っぽいなぁ。ムカつく。……あ、振り返らなくても、わたしは視界に入ってるんだよね。でも、振り返ってくれた……。
「わたしって単純かもしれない」
「……知らなかったのか」
「それどういう意味かな」
「気が済んだならそろそろ帰るぞ」
 ごまかさないでよ、もう! ……まあいっか。今日は許してあげましょう。ちょっと嬉しくなっちゃったからね。

「次はスカルミリョーネも一緒にうろちょろしようね」
「動き回るのは嫌いだ」
「ついてこなきゃまた勝手にどっか行っちゃうよ?」
「見える範囲でなら好きにしろ」
 なにそれ、なにそれ……。見える範囲、広すぎるじゃん。歩き尽くすまで帰って来ないよ? それでもちゃんと見ててくれるの? ああ、恐ろしい! たったこれだけでもう……驚いて慌ててくれなくてもいいって、思っちゃってる。
「スカルミリョーネは恐ろしいね」
「……褒めているのか?」
「うん」
「……そうか」
 言葉の裏側まで探るのは苦手だなぁ。だけど考えるほど嬉しくなる。もっと知りたい。もっと、もっとずっと探し続けたい。……見える範囲で。

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