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断罪

 サヤの目を塞いでしまいたい。戦いが激化するにつれ流される血は増える。汚させたりしない。だけど戦えないという事実そのものがサヤを苦しめるなら……こんな冷たい荒野から、遠ざけてしまいたい。あたしがそう考えるくらいだもの。ゴルベーザ様はきっと、もうずっと、それを望んでいたのでしょうね。
「サヤを連れ帰ってくれんか」
「あたしがですか?」
「お前ならばサヤも怒るまい」
 そうね。スカルミリョーネやカイナッツォではサヤが激怒するわ。散々暴れた末に無理矢理連れ去っても、再びゴルベーザ様に触れるまで荒れ続ける。ルビカンテだってサヤの意思を無視してまで連れて帰るかは分からない。身の安全と同じほどに、彼女の願いを大切にしているもの。あたしなら……サヤは怒らないわ。「もうっ、バルバリシア様のばかー!」とか言ってそれだけで許してしまうでしょう。……だけど、傷つくのは同じじゃないの。あの子に、ゴルベーザ様の手を離せなんて言えない。

「……ゴルベーザ様」
「ああ」
 あたしが言わなくたってこの方は知っている。それでも念を押しておかなければ。サヤを託してくださるというなら、あたしもサヤを最優先に動くわ。傷つけることは許さない。だからゴルベーザ様が傷つくのも、許さない。
「贖罪などのために命を落としたら、サヤはきっと怒ります」
「そうだろうな」
 無事に戻って一緒に償おうと、そう言うに違いない。意思を投げ出して死ぬことには何の意味もない。人間は容易に戻って来れないのだから……。命を捨てたって、それが誰かのためでも、徒に罪を増やすだけよ。
「置いていかれたらサヤは、いつまでも待ち続けます」
「……ああ。これまでも、そうだったようだ」
 胸が熱くなるわ。ずっと、待っていてくれたのだと知ると。あたしたちはそれに応えられない苦しみを知っている。ゴルベーザ様にはそんな思いを味わってほしくない。

「サヤは守り通します。ゴルベーザ様がお戻りにならなければ……サヤを連れて、地獄までもお迎えに参りましょう」
 不敬な物言いだわ。脅しととられても仕方ないのに、ゴルベーザ様は笑ってしまった。嬉しそうに。……別に地獄でも構わないんじゃないかしら? そこに、サヤとゴルベーザ様がいるならば。……ダメよそんなの。少なくとも今はまだ。築き直す時が来たんだわ。かつてより強固に、疑いようもない確かなものを。ゴルベーザ様……まだ何も、始まってはいません。だから必ず……。

「私の死で償えるなどとは思わぬ。私の生涯を懸けるべきものだ……」
 できることならばサヤと共に。……あたしたちに押し付けてしまえばよかったのに。すべては闇の為した業だと。ゴルベーザ様は巻き込まれただけじゃないの。誰より苦しんでいるのは……。ああだけど、償わずにおれない弱さが、あなたが人間である証なのですか。

「……ゴルベーザ様の御帰還を待っているのは、サヤだけではありませんから」
「分かっている……今は、な」

 もう一度、手に入れたい。今度は手放さないわ。かつてのように、それよりももっと近くで、同じ時間を生きるのよ。サヤと……あなたと共に。

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