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コンビネーション:四天王

 今回わたしを呼び出したのはゴルベーザ?だった。いやうん、たぶん……ゴルベーザなのは間違いないんだけど。一見しただけじゃ疑問符がつくのは無理ないと思う。
「何その格好。頭大丈夫?」
「……酷い言われ様だな」
 まず、なんでかわかんないけど甲羅を背負ってる。カッパーアーマーとかではないと思う。なんか見覚えあるんだけど、もしかしてあれカイナッツォの? でもなんでゴルベーザが背負ってるんだろ。コスプレ?
 それから頭ね。いつも通りの兜の上に赤いバンダナ……ううん、頭巾かな。ルビカンテが被ってるみたいなのを着けてる。変だし、無意味だ。やっぱりコスプレ?
 で、腕だ。金色の腕輪を装備してるんだけど……きっと手甲の上からじゃ嵌まらなかったんだろうね。なんか紐で無理やり縛り付けてる。もう全然わかんないよ。
 最後に、武器がまた一段と変だ。いつもは普通に剣かロッドなのに何故か格闘武器。爪か牙かは知らないけど。
 甲冑で肉弾戦挑むなんて意味不明だよ。防御面では強いかもしれないけどその狭い視界で敵を捕まえられるわけないし、死角が多すぎて危ない。魔道士なのに。

 いや、べつに普段召喚される一瞬でそんなに詳しく見てるわけじゃないけどね。あくまでも今回の格好が異常だから目に留まっただけ。ゴルベーザが何を装備してるかちゃんと敵に対応できるものかなんて気にしてないから!
「気に入ってるなら悪いんだけど、すっごく変、似合わないよそれ」
「……サヤが四天王を気に入っているから」
 気に入ってるっていうか今じゃもう身内みたいな気持ちだけど。こんな形でも、また会えるなんて思わなかったから嬉しかったし……でもそれ今の話題と関係あるの?
「私がこれを揃えるのは大変なのだぞ」
 だったらやめればいいのに。そういえばゴルベーザには装備できない種類の防具が多いな。ここんとこ素材集め頑張ってるって聞いた。心得集めてまで身につけてるんだ。
 ……一生懸命揃えてそれじゃあね〜。ファッションセンス狂ってるよ。例え性能がいいとしても外見もちょっとはこだわった方がいいんじゃないかな? 大体わたしは前衛がいかにも魔道士チックな三角帽子を被るのもあんまり好きじゃなく、まあそれはいいや。

「いつもの装備の方がいいと思うけどなー」
 本当に素直な感想を漏らしたら、ゴルベーザが目に見えて落ち込んだ。う、うん……頭巾と腕輪と格闘、だっけ? 甲羅は何に分類されるかわからないけど。……大変だったんだろうってのは理解できるよ。でもやっぱ、なんでそうまでしてそれが装備したかったの? とも思う。
 ……ちょっと言い過ぎたかなぁ……。
「あの、べつにダメなわけじゃないよ? ただ全部いっぺんに装備しなくても〜っていうか……他のと合わせたらどうかなって」
「揃えて使わねばコンビネーション効果が発現されぬ」
「何の?」
「だから、四天王の」
 っていうとあれはやっぱりカイナッツォとルビカンテの。じゃあ腕輪はバルバリシア様で、スカルミリョーネの……牙かな? 何も体の一部を差し出さなくても。
「……もしかして、気を使ってる?」
 ゴルベーザがわたしのこと覚えてないから。四天王のこと、忘れてるから。図星っぽくよそ向いちゃったゴルベーザだけど……、
「正直そんな変なカッコされても嬉しくないというか」
 ガーンって感じにオーバーアクションとって、しかもそれは素なんだろうなってちょっと可愛く思えたりもする。

「ちゃんと、いい性能の装備使えばいいと思うよ。……怪我したらやだし」
「サヤ……しかし私は、お前達のことを」
「思い出さなくていいよ! ここは違う世界なんだから!」
 だから余計なことに煩わされないで、自分のために行動すればいいんだ。人間と召喚獣は違うんだから。わたしは今、召喚獣なんだから。……守ってあげる側なんだから!
「私が余計な気を回したから怒っているのか」
「ち、ちがっ! ちょっと照れてるだけ……って言わせないでよ」
「そうか……」
 なんだかなぁ、ギルガメッシュが「違和感があるから知り合いに喚ばれたくない」って言ってたけど、今ならわかる気がする。
 このゴルベーザ、確かにわたしの知ってる人なんだけど、どこかで少しだけ違うみたいだ。ゼムスが介入してないからとかそんなことじゃなく、わたし達の立場が変わったからでもなく。
 やっぱり、別の世界なんだよね……。

「……」
 いろいろと複雑な想いを振り払って、見えない顔を見上げてみる。遠さは変わってないんだ。それが虚しい。わたしを知ってても知らなくても同じなんて。
「……それ、取らないの? 兜」
「ああ、外した方がいいのか」
「い、い、いや、そういうわけじゃ、まだ心の準備がっ」
「……べつに普通の顔だが?」
 でもあれだけ頑なに拒否してたくせに、あっさり見せられても困る。元の世界に帰ったら、ゴルベーザはまた忘れるのかな。それとも、完全に別人なのかな。
「……気が向いたら見せてもらおうっと」
「分かった」
 気を使ってくれて優しくて、他人行儀だ。きっと他人なんだ。悲しいけど、虚しさは消えないけど。こっちのゴルベーザとも、まあ。
「これからは、仲良くしてあげないこともないよ」
「……ありがとう?」
 なんか今、はてなマークついてたように聞こえたんですけど。

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