空間と時間の共有
練習後。
着替えを終えて帰ろうとしている堺を丹波が呼び止めた。
「堺ー」
「何だよ」
堺が面倒臭そうに振り返りる。
「いや別に何でもないんだけど」
自分でも何で呼び止めたのか分からない丹波。
ただ何となく、このまま堺と離れてしまうのは惜しい気がした。
「じゃあ呼ぶなよ」
はぁ
と溜息をついて、再び丹波に背中を向ける。
「あ、堺!」
また呼び止めてしまった。
今度は返事はなくて、ただ心底嫌そうな顔を向けられる。
「一緒に帰ろう」
丹波は堺を呼び止めた理由を何とか作り出した。
「ああ?」
「すぐ行くから、ちょっと待ってろ」
また堺がムッとした表情をする。
きっと疲れているのだろう。
それでも文句を言わず自分を待っていてくれる堺を心底愛おしいと思った。
丹波は車を走らせる。
普段はガンガン音楽を鳴らすために閉め切られている窓も今日は空いていて、心地好い風が二人の前髪を揺らした。
隣で堺は窓際に頬杖をついたまま外の景色に見入っていた。
「……あのさー堺」
「ん?」
「なんか俺さ、すっげーお前のこと好き」
「……何だよ急に」
堺は頬杖をついていた手をずらして口元を隠すようにした。
ミラーに少し照れた堺の顔が映っている。
「もっとお前といれたらいいのになー」
「……いつも一緒にいるだろ」
そうゆうんじゃなくてさ
と丹波が苦笑する。
「丹波」
堺が外を見たまま声をかける。
窓の外を様々な風景が通り過ぎていく。
「今日はまだ一緒にいてもいいか」
少し驚いて堺を見ると、ただ視線を逸らされる。
真っ赤な耳。
丹波は堺に見えないように緩く微笑んだ。
「勿論」
ハイパー駄文タイム
ほのぼのタンサクを目指して見事挫折しました
一緒にいたい二人の話
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