コン・アモーレ
ソファーで寛いでいる城西に問い掛ける。
「ねー何食べたい?」
「お前が何か作ってくれるのか?」
珍しいことを言い出す持田に、城西は読んでいた小説から目をずらした。
「俺ね、クッキー作った」
何食べたい
と聞いておきながら、出てくるものは決まっているらしい。
話が噛み合っていないな、と城西は思ったが、いつになく楽しそうに笑っている持田にほっこりしてしまう。
「シロさんに食べてほしい」
目の前に回り込んで差し出された皿の上には色鮮やかなクッキー。
到底手作りとは思えない。
「……すごいな」
ビックリして持田を見上げると、自慢げに口の端を上げた。
持田は皿の上から真っ赤なドレンチェリーが乗ったクッキーを手に取り、城西の口元に持っていった。
「はい、どーぞ」
一瞬躊躇したが、クッキーを持つ手に巻かれた絆創膏を見て、柄にもなく胸を打たれた。
ゆっくりと口を開けると中にポイッと放り込まれる。
程よい甘さとサックリとした軽さ。
「美味い?」
「ん、ああ、美味いよ」
端的に感想を述べると持田はふわっと笑って、ちゅ、と口端にキスをした。
「ねー、俺も食べたいんだけど」
「ん?」
「食べさせて」
ローテーブルの上に腰を下ろした持田を行儀悪いと思いながらも、小説を隣に置いて皿の上からマーブルクッキーを一枚取った。
口元に運ぶとパクッと奪われて、丁寧に指についた粉まで舐め取る。
「んー甘い」
「そうか」
「愛が詰まってるからね」
でしょ?
と悪戯な笑みを向けられて、城西は溜息をついた。
本当は絆創膏の下には何にもなくて、キッチンにはクッキーの包み袋が散らばっている。
気付くのはもう少し後。
何となく気付いてるけど敢えて騙されるシロニーと、気まぐれな持田さんの話
宙ぶらりんな二人が書きたかった……はずです
久しぶりに短め
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