いつでもいたいんだ


朝から持田はずっと不機嫌だった。


何を聞いても「何でもない」しか言わない。


そうかと思って放っておけば泣きそうな顔をする。


近付けば逃げる。


離れればしょげる。


困ったものだと城西は頭を掻いた。


こういう時の持田は手に負えない。


そう、これは不定期に巡ってくる持田の「不安定期」なのだ。





持田は城西の手をクイクイと引っ張った。


理由はきっと聞いても答えないから、敢えて聞かない。


そのまま城西は持田の家に連れていかれた。


車の中でも何も喋らない持田。

外はもうすっかり夜で、窓からうっすらと差し込む月の青白い光りで持田がより一層不安定に見えた。






生活感の殆ど感じられない殺風景な部屋に入る。


城西をソファーに座らせた持田はそのままふらりと奥の部屋に入っていった。


しばらくして戻ってきた。


その手には妖しく光るナイフが握られていた。


「シロさん、手ぇ出して」


今日初めて持田の声をまともに聞いた気がした。


それはまるで一晩中泣いていたかのようにしゃがれていて、酷く痛々しかった。


城西は言われるままに手を差し出した。


その手は持田の左手にギュッと握られた。


ゆっくりとナイフの刃が手の甲に近付く。


城西はただそれを眺めていた。




つぷりと音を立てて皮膚が裂けた。


赤い液体が二人の手を汚す。





白いソファーに真っ赤な血が零れた瞬間、持田は我に還ったかのように目を丸くした。


「シロさんっ血出てる!」


手に持っていたナイフを投げ捨て、近くにあったティッシュで血を拭いた。


持田の両目からボタボタと涙が零れた。


「何で、手、離さなかったんだよ!」


「……お前が手を出せって言ったんだろ」


「だからって、そんな、馬鹿じゃないの?!」


「……かもな」


城西は血がついていない方の手で持田の肩をグッと抱き寄せた。


込み上げる愛おしさと切れた手の痛みが混ざり合ってジクジクと熱くなる。


「っ、シロさん、シロ、さん」

腕の中で震える持田の頭ををそっと撫でると、潤んだ瞳と目が合った。


「シロさん…俺、俺、」


「いいんだ、持田。平気だよ」

「でもっ、いっぱい、血…」


「……俺よりも、お前の方がもっと痛いだろ」


次々と溢れてくる涙を指で拭ってきつく抱きしめた。


ジンワリと血が服に染み込む。

城西の服も涙でぐちゃぐちゃになっていく。






好きだよ


好き過ぎて痛い





嗚咽と共にそんな言葉が聞こえた気がした。











まともな文を書こう!
と思ったらこんなことに……
おめでとう自分\(^o^)/

愛に飢えてる持田さんとそんな持田さんが愛おしい城西さん
この二人は感覚が麻痺しちゃってる位が好きです
愛しすぎて痛い(キモい

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