通じ合いたい


世良は布団の上にゴロリと横になってケータイを開いた。


別に何をしようという訳でもなくアドレス帳を開く。


グループ分けされていないそれには無秩序に人名が並べられている。


ずっとスクロールしていくとある名前が目に留まった。



堺良則



堺は最近ケータイを買ったばかりだった。


世良はどうしても1番に堺のアドレスが知りたくて、その機会をずっと伺っていた。


そして遂に念願の堺のアドレスをゲットした。


が、
未だにメールをしたことがない。


別に話題が無いわけではないのだが、いざ送るとなると
今忙しくないかな、とか
そんなこと直接会った時でいいだろって言われないかな、とか色々気になってしまってどうしても送信キーが押せない。


送ったら送ったで、返信が来なかったりしたらリアルに凹む。

世良は
はぁ、と溜息をついた。


また今日も何も出来ずに終りそうだ。


このままでは苔が生えてしまう。


手に持ったケータイをグッと握りしめた。






「ひでぇ面だな」


朝一で堺に会った。


確かに今日の世良は目の下に黒々とクマを作っていた。


「なんかあったのか?」


「別に……何でもないっす」


心配してもらえるのは嬉しいが、原因はあんたですとは言える訳が無い。


世良は無意識に苦い顔をしていた。


「あのよ」


堺が頭をガシガシと掻き混ぜる。


「辛かったらいつでもメールしていいんだぜ?何のためにアドレス交換したんだよ」


世良は余り開かない目を目一杯見開いた。


たった一言で自分の悩みが解決されてしまった。


「……じゃあ、俺が辛いと思ったら堺さんがメールして下さいよ」


「何だよそれ」


俺は超能力者かよ
と屈託のない笑顔を見せられる。


胸がトクンと鳴る。


ポケットの中でケータイが震えた気がした。






もう一度アドレス帳を開こう。


今度はきっと届くから。










支 離 滅 裂 !
堺さんにメールできなくてモヨモヨする世良たん
うちの世良にしては珍しくピュアっ子です
堺さんメール返せるか心配です(技術的に)


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