賜り物&捧げ物





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【捧】たかさき様へ



にんじん、玉ねぎ、ジャガ芋にサラダ用のトマト、レタス、パプリカ。


赤に黄色に黄緑、オレンジ。
みずみずしい色とりどりの野菜達。


子供の玩具の様に色鮮やか。










丹波が俺の家に押しかけてきて飯を食わせろと言う。


まぁ、ここまではいつも通り。


相変わらず失礼なヤツだと思ったし、それを二つ返事で了解してしまう自分も相当物好きだと思う。


ただ、この先がいつもと違う。




「俺も手伝いたい」


「あ?」


幻聴かと思った。


キッチンに入ってきた丹波に驚いて、危うく足の上に包丁を落とすところだった。


「げっ、何やってんだ堺!危ねぇな!」


「…おお」


右手からスルリと包丁を取り上げられて、そのままカタリとまな板の上に置かれる。


「怪我してないか?」


「…おう。ってか丹波、今何て言った」


「は?怪我してないかって」


「いや、その前」「ああ、手伝いたいって言った」


うん、どうやら幻聴ではないみたいだ。


だとすると…


「お前熱ある?」


「お前は俺を何だと思ってるんだよ」


苦笑する丹波。


だってお前、そんなん長年付き合ってきて初めて聞いたぞ。


そりゃ驚きもする。


「今日は何作んの」


「あー…っと、チキンカレーと野菜サラダ」


オッケーオッケー
とさっきまな板の上に置いた包丁に手を伸ばす丹波。


本当に手伝ってくれるのか…って、あれ?


「丹波、お前手ぇ洗ったか?」


「……あっ」





前途多難だ。










ピーラーで人参の皮を剥いていく。


薄く丁寧に剥かれた皮がパラパラと生ゴミ用のごみ箱に落下していった時、隣からグズグズと鼻を啜る音がした。


「うっ…く……ズズッ」


「…丹波、玉ねぎ…」


「目が、目が……」


「…もういい、俺がやるからお前はジャガ芋を切ってくれ」


ほら、と皮の剥けたジャガ芋をボールに入れて手渡す。


俺は急いで人参の皮を剥ききって、刻みかけの玉ねぎを切った。


隣でしばらくスンスン言っていた丹波も大分落ち着いてジャガ芋に手を伸ばした。


「あっ!コラ丹波危ねぇだろ!手はこう、丸めて猫の手!!」


「堺が猫…?」


「アホ!手ぇ切るぞ!」


コイツ、料理の「り」の字も知らないのか。


危なっかしい手つきの丹波に始終ハラハラしながらカレーを作る。


はっきり言って一人でやった方が早い。


だけど丹波があまりにも一生懸命だから、その気持ちを無下にするようなことはしたくない。







「人参とジャガ芋は一口サイズだぞ」


「おう」


「…お前、なんか切るの遅くないか?」


「む、見ろ堺!星型に切ってみた!」


「頼むから普通にやってくれ」




「丹波!なんか焦げ臭いぞ!」


「えっ、あ!玉ねぎが!」


「バカ!ちゃんと混ぜろよ!」




「あれ…パプリカがねぇ」


「あ、あれ刻んじゃったぞ」


「おい、あれはサラダ用だぞ」


「マジで!?」










ナベの中にカレールーを入れた頃にはもう体力も気力もすっからかんになっていた。


料理でこんなに疲れたのは今まで生きてきて始めてかもしれない。


「はぁ…料理って大変なんだな」


丹波がグッタリして言う。


ああ、確かに大変だな。


特に今日は。


ハァッ、と溜息をついて視線をナベに移した。


ナベの中身が沸騰してグツグツと音を立てている。


焦げてしまわないように弱火にした。


「なんかさ…いつもありがとうな、堺」


突然背中に投げられた言葉に振り返ると、自分を真っすぐ見つめる丹波の瞳に捕らえられた。


「なんだよ、急に」


ちょっと気恥ずかしくなって視線を流すと、視界の隅で丹波が目を伏せるのが分かった。


「俺、料理とかしたことなくてさ…やってみたらすっげえ大変でさ、お前はいつもこんなに大変なことしてるんだなって思ったら、なんか、ありがとうなって…」


思ってと消え入りそうな声で続けて、丹波は恥ずかしそうに頬っぺたを掻いた。


プクプクと煮立ったカレーが音を立て、美味しそうな香りがする。


「…なんで、手伝おうと思ったんだよ」


率直な疑問を投げかけると、丹波はまたまた恥ずかしそうにしてモソモソと口を開いた。


「俺さー…堺の料理すっげえ好きなの。食べるのもそうだけど、お前が俺のために何かしてくれることがすごい、好き、だから、だから俺もお前のために何か出来たら、お前も嬉しいのかなって、うん」


言い切ってから、
恥ずかしいっ!と丹波は頭を抱えた。


何だか、顔がすごく、熱い。


胸がキュッと締まって、鼻の奥がツンと熱くなった。


(丹波、すっげぇ嬉しい、よ)



少し涙が出そうになったのは、きっと玉ねぎの汁が目に染みたせいだと思った。











真っ白な皿の上に暖かい白米。

トロリとカレーを注いで、その隣に野菜サラダを並べる。


向かい合って座って、同時に手を合わせる。


一口口に含むと、


「「美味い」」


同じ言葉が漏れたから、二人でクスッと笑った。




美味さの秘訣はたっぷりの愛情。













長らくお待たせしました!
その割りにはがっかりクオリティーで申し訳ないです…
こ、こんなんでよろしいのでしょうか?
苦情がありましたら24時間体制で受け付けます(_ _)
たかさき様に相互記念として捧げさせて頂きます
本当にありがとうございました!

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