落ち込んでる夢主を慰める



▽何かしらで落ち込んで自分に価値がないとか言い出す夢主を慰めてくれる



一つ、また一つと立て続きに悪いことが起き、私は精神的に参っていた。皆の前で落ち込んだ姿は見せたくなくて部屋に戻ってきたけれど、一人になると自己嫌悪にかられる。なんで自分はこうなんだろう。なんで自分は何も出来ないんだろう。自分がここにいる意味はあるのか。次々と湧き上がってくる黒い感情に思考が支配される。
床に座って膝を抱えていると、突然私の名を呼ぶ声がした。声のした方をを振り向くといつの間にか部屋の中にイルーゾォが立っている。おそらく鏡から中に入ってきたのだろう。いつもはその姿を目にするだけで嬉しい気持ちが溢れてくるが、今はとてもそんな気分にはなれない。こんな酷い顔を彼に見られたくない。

「ごめん、今日は一人にしてくれる?」

ごめん、ごめんなさい。本当はその胸に縋って泣いてしまいたい。その大きな手で頭を撫でて欲しい。私はここにいても良いと、私が必要だと言って欲しい。でも出来ない。これ以上みっともない姿を見せたくない。彼に、嫌われたくない。
するとあきれたような彼の溜息が聞こえる。そして気が付くと私の体は鏡の中に引きずり込まれていた。突然のことに戸惑い、不安げに見つめる私に彼はこう言った。

「言いたいこと全部言え。オレが全部聞いてやる」

彼のその言葉に堰を切ったように言葉が溢れてくる。

「わ、私…何にも出来ない、自分が嫌で…こんな私には、存在価値もないんじゃあないかって。このままここにいても良いのかな…?皆にとって何の価値も、何のメリットもない、んじゃあ…」

言葉を詰まらせながら話す私を優しく見つめる彼の瞳はとても優しかった。

「例え他の奴にどう思われようが、おまえはオレにとっての唯一だ。それを忘れんじゃあねぇ」
「この中なら泣いたって誰にも見られねぇ、誰にも聞かれねぇ。好きなだけ泣いて吐き出せ」

こんなのずるい…格好よすぎるんじゃあないの?
私を真っ直ぐに見つめてそう言う彼に、既に膜を張っていた瞳からボロボロと涙が流れ出す。私はそのまま彼の胸で泣き続けた。その間彼は何も言わなかったけど、私の頭を撫でることはやめなかった。





「待って見ないで、イルーゾォ。今絶対酷い顔してるから」
「見るなって言われたら見たくなるもんだろ?」

その後涙でボロボロになった顔を見られたくなくて顔を上げようとしない私と面白がって顔を覗き込もうとしてくる彼との攻防が起きていた。

「ひゃっ!」

体に力を入れて見られまいと抗っていたが、首筋に唇を落とされて思わず体から力が抜けてしまう。両頬を包まれ、顔を上げらされると視線が交わり、彼は満足そうに笑った。

「これからもおまえが泣きたくなったらいつだってここに入れてやる、オレがそばにいる。一人で抱え込んでねぇでオレを頼れ。分かったか?」
「…うん」
「ならいい。ほら、行くぞ。あいつらも心配してたからな、顔出してやれ」
「うん…!」

きっとこれからも自分に自信がなくなる時がやってくるだろう。でも大丈夫。私には皆がいる、彼がいる。きっとその事が辛い事も乗り越えさせてくれる。
入ってきた時からは考えられないほど明るくなった気持ちで、私は彼に手を引かれて鏡の中から飛び出したのだった。



Twitter 2019.09.28

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