ドライブデート



▽暗チ所属夢主とドライブデート



「えー、プロシュートって運転荒いし、車内煙草臭いから…」

次の休日が重なりそうと分かり、久し振りに遠出でもするかと提案されたのだが、私はあまり乗り気ではなかった。理由は先程の通り。昔初めて乗った時にもう今後乗るものかと心に決めたほど、同乗者への配慮を感じさせない運転だった。ギアッチョの方がもっと優しい運転をしてくれる。キレてない時限定だけど。そして車内には彼の煙草の香りが染み付いている。元々あまり煙草が得意ではない私にとって長時間その匂いに包まれる状態は可能な限り避けたい。普段は私が煙を被らないように目の前では吸わないでいてくれるが、長年で染み付いた香りはそうもいかない。
思わず口から出た本音にしまったと口を覆ったが、やはりしっかり聞かれたようで、彼の眉間に深い皺が刻まれる。そしてちぎれるのではないかと思えるほど頬を抓られた。



あの会話を交わしたのはもう二週間ほど前のこと。ついに今日は約束の日だ。結局どこに向かうのかどんな手段で向かうのかを決めることもなく当日まできてしまったわけだが、私を迎えに来た彼の手に車のキーが握られているのを見る限り、当初の予定通りドライブデートとなりそうだ。
鼻にくるであろうと身構えつつ車に乗り込んだのだが、車内にきつい煙草の香りはない。代わりにほのかに香る煙草に混じって甘いムスクの香りがした。

「今日どこ行くんだよ」
「えっ…ごめん、特に考えてなかった」
「しょうがねぇ…とりあえず車出すぞ」

そういうと車を発進させた彼の横顔をこっそり見つめた。彼はこちらに目もくれず、真っ直ぐに正面を向いて運転を続けている。そして気付いた。停車する時も道を曲がる時も車体の動きにつられて私の体が揺さぶられることがない。

「ふふっ」
「なんだよ」
「ううん……ありがとう」

私のために。
そう伝えれば彼は何も言わずに扉に肘をつき、外の景色へと目を向けた。直接顔は見えないが、彼は気付いているんだろうか。ガラス越しに少し赤く染った顔が見えてしまっていることに。

「プロシュート。私、プロシュートと行きたい所あるんだけど」
「…あぁ、どこでも連れてってやるよ」

私のために行動してくれた彼の気持ちが嬉しいから、もう少しだけ秘密にしておくとしよう。どんなに運転が荒いとしても彼の助手席に座れる唯一の女性でいられることが嬉しかったのも、彼の香水に混じって香る煙草の香りも悪くないなと思い始めていたということも。



Twitter 2019.09.18
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -