怪我をしてたのがバレてしまった



▽仕事で怪我をしてしまい、何となく秘密にしていたがバレてしまった


やはりこの男の目は誤魔化せないようだ。

「それ、昨日の任務でか?」

凝視する彼の視線から逃れるために少し足を引くとズキっと痛みが走る。思わず顰めてしまった顔をこの男は見逃さなかった。

「あのよォ、別に怪我したこと自体は怒ってねぇよ」

気まずそうに視線を彷徨わせる私に溜め息を一つつくと彼はそう言った。

「でもそれを隠してたのは納得いかねぇな」
「ごめん…迷惑かけるかなと思って」

私がそう言うと彼はやれやれといったように先程よりも大きい溜め息をついた。あぁ、呆れられている。そんなつもりじゃあなかったのに。
俯いた私の頭に温かくて大きい手が乗せられる。顔を上げれば細められた緑の瞳と視線が交わった。

「オレに迷惑かけまいとするおまえはいじらしくて可愛いけどよォ。面倒をかけられても良いと思えるからおまえと一緒にいるんだぞ」

その辺、しっかり自覚しとけよなと知らぬ間に頬に添えられていた手に包まれた。コツンと合わさった額から彼の熱が伝わってくる。

「そういう貴方は怪我をしても私に何も言わないじゃあない」
「そりゃあ好きな女の前では見栄を張る生き物なんだよ、男ってのは」

にっと笑う彼に不満げな表情の私の機嫌を取るかのように彼は私の瞼に唇を寄せた。そしてくるりと私の体を横に回転させて抱き上げた。今日はもう部屋で大人しくしとけと私の部屋へ向かう彼。

「…本当に面倒かけてもいいの?」
「そう言ってんだろ」
「じゃあ今日この後、私と一緒にいてって言ったら聞いてくれる?」

どくどくと脈打つ心臓や熱が集まった顔を気付かれたくなくて、首にまわした腕に力を込めてその首筋に顔を埋めた。

「あぁ、おまえのためなら」

それは表情が見えなくても分かる、とても優しい声だった。



Twitter 2019.08.30

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