一泡吹かせたい



▽素直に愛情表現してくる夢主にタジタジになりつつも一泡吹かせようと画策する



××はオレの姿を認識した途端、目を輝かせた。笑顔を浮かべ、跳ねるようにこちらに近付いてくる姿は素直に愛おしいと思う。

「おはよう、イルーゾォ」
「あぁ」

愛想のないオレの返事にも嬉しそうに笑う。そしてその細い腕をめいっぱい伸ばしてオレの体に抱き着いてきた。締まりのない顔で胸元に顔を擦り付けられ、心拍数が高くなるのを感じる。それを聞かれないよう引き剥がそうとするが、こいつはさらに腕の力を強めてきた。

「ふふ、イルーゾォ好きー」
「分かった、分かったから離れろ!」
「やだ」

絶対離れないとさらに体を密着させる××と引き剥がしたいオレとの攻防はいつも決まってオレの負けだ。今日も今日とてオレは××が満足するまで大人しくしているしかなかった。
いつもこうだ。所構わず好き勝手くっついてきてはオレを惑わせる。だが男としていつまでもこんな情けない状態を続ける訳にはいかない。もうホルマジオに馬鹿になんかさせねぇ。……断じて"たまにはおまえも返してやんねぇと愛想つかされんぞ"って言ってきやがったプロシュートの言葉を気にしてる訳じゃあねぇからな。



「おはよう、イルーゾォ」

次の日も変わらず締りのない顔で跳ねるようにこちらに近付き、抱きつい
てくる。いつもなら引き剥がす所だか今日は違う。黙って受けいれ、胸元にある頭を撫でて髪の中に指を滑らせる。現れた耳に唇を寄せればピクッと身体を震わせて埋めていた顔を上げた。その瞳は大きく見開かれ、まつ毛を震わせながら何度も瞬きを繰り返す。そしてすぐにその顔は赤く染まり、オレから離れようと身動いだ。

「待ってどうしたのなにがあったの……!」
「どういう意味だよ」
「だってイルーゾォがこんなことするはずない!」

更に離れようとする体を強引に抱き寄せる。さらに密着した体からは激しく脈打つオレの心臓に負けないぐらいの鼓動が伝わってきた。確かに一泡吹かせてやろうと思っていたが、それにしても動揺しすぎじゃあねぇか?……いや、そうか。この程度のスキンシップでこんな反応をされるぐらい普段オレは何もしてやってねぇってことか。

オレだってなぁ、出来ることならもっとおまえに気持ちを伝えてやりたいし触れていたい。でもオレがそんなこと簡単に出来るような奴じゃあねぇことぐらい分かってんだろ?

「イ、イルーゾォ」
「……」

あぁ、でもそれじゃあ駄目だ。いつまでも当たり前に気持ちを貰えると思うな。

「おい、よく聞いとけよ」
「う、うん…?」

いつもおまえは自分の方がオレのことを好きだと言うが、それは間違いだ。
そしてオレはいつから伝えていないのか分からないこの思いを言葉にする。すると一瞬泣きそうに眉を寄せたが、すぐに笑顔になった。それはオレが愛してやまない笑顔だった。



Twitter 2020.01.04
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