それは私だけ


「ねぇ、××の彼氏ってさ、いつもあんな感じなの?」

友人の恋人との惚気話を聞きながらコーヒーを味わっていると唐突にそう質問を投げかけられた。

「あんな感じとは?」
「そのまんまの意味よ。私はチームが違うから直接話したことはないけど噂を聞いてるとあんまりよろしくない性格してるみたいじゃない?」

どんな噂が流れているというのか…そりゃあ人格者とはとても言えないし性格がよろしくないというのは否定はできない。

「ねぇ、本当に大丈夫なの?まさか酷いこととかされてないよね?」
「大丈夫に決まってるでしょ。ちょっと口が悪くて素直じゃないだけ。すごく大事にしてくれてるよ」

友人が私の心配をしてそう言ってくれているのは分かるが、悪いけどそこは否定させてほしい。まだ納得していない様子の友人にこの話はお終いと手を叩き、それで?あんたの彼氏のほうはどうなの?と話題を切り替えると嬉しそうに話し出す。本当に調子が良い友人だ。





友人と別れ、アジトに帰り着くとカツカツと硬い靴音を響かせ、足早にイルーゾォが近付いてきた。ただいまと声をかける前に抱き寄せられ、大きい体を屈ませ肩に顔を埋めてくる。背中に腕をまわして抱き締め返しながらただいまと声をかけるとおかえりと返答してくれた。

その後自室に帰り一息つこうと荷物を置いた瞬間、一緒にくっついてきたイルーゾォに抱き上げられ、ソファに座った彼の膝の上に座らされて後ろから抱きしめられてしまった。肩に乗っている彼の顔の方に視線をよこしながらどうしたのか尋ねるが唇を尖らせるだけで返答はない。

「イルーゾォ?」
「…××が一人で出掛けるのが悪い」
「なんだ、寂しかったんだ」
「…違う」

違うといいつつも私のお腹にまわった腕の力は強くなる。何とわかりやすい男だろうかと思わず笑ってしまった。

「今度の休みは二人で出掛けようね?」
「…フン!しょうがないから付き合ってやる」

途端に口角が上がり、鼻をすり寄せてくるイルーゾォ。本当に分かりやすい。

ふと昼間の友人との会話を思い出した。これのどこが大事にされていないと、愛されていないと言えるだろう。…でももう少し友人には心配をかけておいてもいいかもしれない。こんな彼を知っているのは私だけでいいのだから。



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2019.04.04
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