溶けた中にあるものは


「よォ、何やってんだ?」
「ホットチョコレート作ってるの、今日は冷えるから。ついでにホルマジオもいる?」
「ああ、じゃあ頼む」

第一段階を無事クリアしたことにほっと胸を撫で下ろした。緊張からか若干震える手で鍋の中の牛乳とチョコを混ぜ溶かしていく。
今日はイタリアでは恋人達の日。日本のように女性からチョコを渡して告白をする日ではない。でも日本で生まれ育った身としては好きな人にチョコをあげたくなるものではないだろうか。どうしようと頭を悩ませた結果の苦肉の策がこれだった。
完成したホットチョコレートを二つのカップに注いでいく。彼のカップには最後に一手間。気付かれないように一つ、ハート型の小さなチョコを入れた。これで少しでも彼に気持ちが伝わりますように。小さなチョコはスプーンで少し混ぜるだけで溶けていった。

「はい、お待たせ」

カップをテーブルに置いて彼の向かいに座る。まともに彼の顔が見えなくて、冷たい指先をカップで温めながらホットチョコレートをちびちび飲んでいると彼から衝撃的な言葉が聞こえてきた。

「なあ、これは“ギリチョコ”ってやつか?……それとも“ホンメイチョコ”?」

思わず吹き出してしまってホットチョコレートがカップの中で飛び散った。汚れた口元を慌てて拭きながら先程の彼の言葉を頭の中で繰り返す。義理チョコ?本命チョコ?聞き間違いじゃあなければ確かにホルマジオはそう言った。まさか日本のバレンタイン事情を知っていたのだろうか。でも待って、まだ誤魔化せる。そんな意図はなかったと。
気持ちが伝わればいいと願ったくせに、実際にそのチャンスが巡ってきたというのに弱虫な私はそのチャンスを放棄しようとしている。だって私には無理だ。とても彼のパートナーとして隣に立つに値しない。いやそもそも彼が私を選ぶはずがない。

「ち、違うよ、そんなつもりだったんじゃあ……」
「――なあ、素直になったらオレからもご褒美やるよ。どうする?」

その熱の篭った視線に頑なになった私の心はドロドロに溶かされてしまうようだ。伝えてもいいのだろうか、迷惑にならないのだろうか。やっぱり弱虫な私はその一歩が踏み出せない。そんな私の気持ちを見越してか机の上でカップを握り締めた指がゆっくりと解かれ、彼の指と絡まった。ほら早くと催促するように私の指を撫でる彼から逃げられるはずがない。

溢れた想いを伝えた私を待っていたのは三本の薔薇の花束にリストランテでのディナーデートだった。



Twitter 2020.02.15
2020.02.16

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