他校彼女 / 日直彼女



放課後の教室はいつも騒がしいけど今日はなんだがいつもと少し様子が違う。日誌の提出を終えて自分の教室に帰ってくると皆一様に窓辺に集まり外を眺めていた。私が帰ってきたことに気付いた友達が足早にこちらに近付いてくる。

「ねえ、なんか校門の所に男子がいるんだけど!しかもすごいイケメン」

男子?女子校に一人で来るなんて度胸あるな。一体どんな人物だろうと私も皆と同じように窓から顔を出して校門の方を見る。するとそこには予想もしなかった人物が立っていた。

「あれー、もう帰るの?」

慌てて荷物をまとめだした私をクラスの子達が不思議そうに見つめてくる。ごめん、急がないといけないんだ。だって―

「うん、彼氏が迎えに来てくれたから」

皆の驚く声が響く教室から足早に出ていく。聞いてないんだけどという友達に心の中で謝っておく。ごめん、また明日話すから!
慌てすぎて靴箱から出した靴を落としてしまう。落ち着け落ち着け。そうだ、走ってきたから髪も乱れてしまっている。靴を履きながら手で軽く直していたが逸る気持ちを抑えきれず、それもそこそこに校庭へと飛び出した。

「仗助くん!」やっぱり女の子ばっかりの中にいるのは気まずかったのか少し俯き加減でいた彼が私の声に顔を上げる。

「どうしたの、突然。私の学校にまで来るなんて」
「悪い、突然だったよな」
「あ、違うよ!嫌だったとかそんなのじゃあなくて……そういえば会うの久しぶりだね」

最後に会ったのはいつだっただろう。いくら隣の市だといってもやっぱりなかなか会えなくて。電話はそれなりにしてたけど実際に会うのとは全然違う。
もしかしてまた背伸びたかな?どうしよう、なんか恥ずかしくて顔まともに見れないかも。

「その、なんつーか……」
「うん?」
「会いたくなっちまって」

つーわけで良かったら今から放課後デートでもどうスか?と手を差し伸べてくる彼。
もう……私が断るわけないって分かるでしょ?




校庭でサッカー部だとか野球部だとかが練習してる音にぼうっと耳を傾ける。今日の日誌に書く内容が思い浮かばず、さっきから感想の欄は真っ白なままだ。

「おめーよォ、さっきからぼーっとして何やってんだよ」

視線を窓の外から声のした廊下の方へと向けると、教室と廊下を隔てる壁の窓枠から体を乗り出した億泰くんがそこにいた。

「日誌の内容が思いつかなくて」
「そんなの適当に書いちまえばいいだろォ?おれなんて一回も書いたことねえ」
「もう、たまにはちゃんと書いてあげなよね」

話をしながら日誌に視線を落とす。適当にって言われてもなあ……今日は特になんにもなかったし。

「あれ、今日は日直だから先帰ってて良いよって伝えたよね?東方くんと帰るんじゃあなかったっけ?」

そうだ、朝そう伝えたはずなのになぜ彼はまだ学校に残ってるんだろうか。

「さっき康一と由花子が一緒に帰っていく所を仗助と見送ってたらよォ、仗助の彼女の話になってよォ」

私への問いへの返事はなく、何故だか彼は突然そんな話を始める。

「そういえば東方くんの彼女って隣の市にある女子校の子なんだっけ」
「おお。そんで最近会えてねぇとかって話してたら、ちょっと行って来るっつって仗助行っちまったんだよ」
「ふふ、会いたくなっちゃったのかな」

なるほど、東方くんの姿が見えないのはそういうことかあ。無事彼女と会えたかな。
確かに東方くんが居ない理由は分かったけど、だからといって億泰くんがまだ残ってる理由にはならないんじゃあないだろうか。

「そんな仗助と康一見てたら、なんかおれもおめーに会いてぇって思っちまったんだよ」
「……毎日、会ってるのに?」
「そうなんだよなァ、おれにもよく分かんねぇんだけどよォ」

それを聞いて思わず日誌を手に持ち、顔を隠した。おーい、どうしたんだよという声が聞こえるが、ちょっと待って。一度落ち着かせるから。

「……億泰くん、すぐ日誌書くからちょっとだけ待っててくれる?だから、一緒に帰ろう?」
「おお!分かった、邪魔しねぇように待ってるぜェ」

ニカッと笑った彼から日誌に視線を戻し、感想の欄を埋めていく。ごめん、先生。今日の日誌適当だけど許してね。恋する女子高生の優先順位なんて日誌より彼氏だって先生も知ってるでしょ?



Twitter 2020.01.09
2020.01.13
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