微睡み


先程まで聞こえていた二人の声が聞こえなくなっていることに気付いた。鍋の火を止め、リビングを覗き込んでみれば二人はソファで並んですやすやと寝息を立てていた。もうすぐ夕食だというのに…。呆れながらふぅと息を漏らす。まぁ仕方がない、はしゃぎ過ぎたのだろう。そんな二人の姿を見ながらここ数日の娘の様子を思い出す。普段仕事が忙しい父親と久し振りに過ごせると今日をとても楽しみにしていたのだ。そしてそれは彼の方も同じ。あまり表情には出ないが、今日の彼は仕事中の姿からは想像できない、ただの我が子を思う優しい父親だった。
ブランケットを隣の部屋から持ってきて二人に掛けてやる。父親の腕にしがみついて幸せそうに眠る娘の頭を撫でてやっているとその腕をやんわりと握られた。

「ごめん、起こしちゃった…」
「構わない。それより、おまえも一緒にだ」

彼はそう言うと私の腰を引き寄せ、娘とは反対側の自分の隣へと私を座らせた。

「私も一緒に寝るの?食事出しっぱなしだし、まだ洗濯とかやらないと」
「少しだけだ。たまにはいいだろう?オレも両手に花で気持ち良く眠れる」

調子のいいことを言う彼に抗議の視線を向けるが、彼はそんな視線など気にも留めず、子供をあやすかのように私の頭を一定のリズムで触れてくる。

「もう…起きたらちゃんと食べてもらいますからね。いつも以上に気合い入れて作ったんだから」
「あぁ、楽しみにしてる」
「あと洗濯物畳むのも手伝ってもらわないと」
「あぁ、分かった」

今日は家族サービスに徹すると決めてるからな。そう微笑んでからゆっくりと目を閉じる彼を見届けた後、私も同じように目を閉じた。



Twitter 2019.10.23
2019.10.23

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