風邪っぴき


「風邪だな。今日は大人しくねんねしてなさい」
「私、子供じゃあないんですけど」
「この時期に何も考えずに薄着で寝て風邪をひくような馬鹿は子供だろう」

あまりにも正論すぎてぐうの音も出ない。気まずさを誤魔化すようにシーツで顔を隠す。そしてベッドサイドのチェストの上に置かれる薬を見ながら飲みたくないなと思っていると、彼はおもむろにその薬を包装から取り出した。そして水を口に含むと取り出した二粒の薬を私の口の中に捩じ込み、唇を合わせきた。戸惑う私にはお構い無しにその口内の水を私へと流し込んでくる。顎は押えられ、口は閉じることが出来ない。苦しさから流し込まれる水を飲み込むと一緒に薬も喉を通り過ぎていく。私が飲み込んだのを確認すると彼は離れていった。荒い呼吸をする私とは対照的に、彼は息を乱すこともなく、平然としている。

「なに、するんですかっ…!」
「君は子供だから一人で薬も飲めないだろう?」
「だからっ」

反論しようとするとまた顎を押えられ、私の頬を伝った飲みきれなかった水の雫を舐め取られる。

「君が素直になれば、残りも飲ませてやるが…どうする?」

その視線は私へ他の選択肢を与えてくれない。

「…子供なので、一人で飲めません」
「そう、いい子だ」



Twitter 2019.10.01
2019.10.01


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