背中へのラブレター


深夜、アジトのリビングで書類を見ているリゾットに少し休憩したら?とコーヒーを差し入れる。後ろからソファに寄りかかり手元の書類を覗くと次のターゲットに関する書類のようだ。今まで一度も任務を失敗せずにこなしてきた要因はこういう所なんだろうなと感心するが、もう少し自分の体も大事にして欲しいと思う。仕事熱心なのはいいけどもう続きは明日にすれば?と背中を両手で軽く叩くが、その背中の大きさに思わず凝視してしまう。そうだな、名前の言う通り続きは明日にしようとリゾットは書類を片付け始める。

…つい魔が差してしまった。触れた手から伝わる体温を感じていると無性に自分の気持ちを伝えたくなったのだ。思わずその背中に“すき”と指で書くとリゾットはこちらを振り返り不思議そうな顔をする。どうかしたか?というリゾットになんでもない、と自分も部屋に戻ることを伝えて別れると駆け足で自室に入る。…やってしまった。ひらがなで書いたからリゾットには分からないだろうけど何をやってるんだ私。今の関係を壊したくないからこの気持ちを伝えないと決めたのは自分ではないか。思わず頭を抱えてしまう。この日はベッドに入ってもなかなか寝付くことが出来なかった。

あれから何日かが経ったが私はその間に何度かリゾットの背中に文字を書いて告白するという行為を繰り返している。いい加減止めないとと思っているが一度気持ちを出してしまったら今まで抑えていた分止められなくなってしまった。リゾットは私が何かを書いているのは分かっているみたいだがただの手遊びか何かだと思っているだろう。不思議そうに楽しいのか?と聞いてくるだけで止めはしなかった。
今日もまた懲りずにリゾットの背中に文字を書いていると最近よくそうするなと話しかけられた。

「そうだね、手持ち無沙汰になるとつい」
「なぜいつもオレの背中でやるんだ」
「…範囲が広くて書きやすいから」

馬鹿みたいな誤魔化しをし、指を背中から離すとリゾットから信じられない言葉が聞こえた。

「今日はオレもやっていいか?」

思わずポカンと口を開けているといつもさせてやってるんだからたまにはいいだろと強制的に背中を向けさせられた。まあいつもこんな自己満に付き合ってくれてるんだからいいか…と書きやすいように背中の髪を横に流すと少ししてリゾットの指が私の背中にトンと触れた。その瞬間、思わずビクッと肩を震わせてしまった。待って待って待って。そのまま背中を滑るリゾットの指に全神経が集中してしまう。途中、下着に指が引っかかったり上から下に撫でるように動かされた時は思わず変な声が出そうになって必死に唇を噛んだ。変な方に行く意識を戻すためリゾットがなんと書いているのかを理解する方に意識を集中させる。
理解した瞬間さっきまで顔に集まっていた熱が引いていくのが分かる。

「いつも同じ形ばかり書いていたから気になって調べたんだ。これ日本語だろう?ひらがな、というお前の国の文字だな」

まずい。

「…よく分かったね。…まさか意味まで調べた?」

聞きたくない。本当に今の関係が壊れてしまうではないか。

「…ああ」

…終わった、だからはやく止めておけといったのにと自責の念に駆られる。ただの同僚の女に背中にずっと告白されていたなんて気持ち悪いにも程がある。はやく謝らないと…そう思うのに後ろを振り向けない、声が出ない、怖い、嫌われたくない。すると肩を掴まれ体を反転させられリゾットと目が合う。涙が滲んだ顔を見られたくなくて思わず顔を逸らしてしまった。

「…ごめん、気持ち悪かったよね。」
「別におまえを責めるためにやったんじゃあない。」
「やめて、そんな気を使わないでよ。」
「違う、聞け。おまえが書いたのをただ真似たんじゃない。同じようにオレのおまえへの気持ちを伝えただけだ。」

思わずリゾットの方へ顔を向けると真剣な顔をした彼と目が合う。

「名前が好きだ」
「…うそ、でしょ?」
「いくらなんでもオレが気を使ってこんな嘘をつくと思うのか?」

そういうと私の腕を掴み、俺の指が這うのを真っ赤になって耐えてる姿を見て欲情するほどお前を思っていると言われ一度引いた熱がまた顔に集まる。そんな私を見てリゾットは小さく微笑むと納得したか?というから私は小さくうなづいた。


オマケ
彼女はその後もリゾットの背中にすきと書くのを続けているとある日、恥ずかしがり屋なお前も可愛いがたまには直接口で言って欲しいものだなって言われるから、リゾットの服の裾掴んで背中に額をくっつけて頑張って好きという。それを見てリゾットは可愛い可愛いと思いながらギュッて抱きしめてチュッチュしてくる。

リゾットの方もたまに彼女の背中にすきと書くけどいつも真っ赤になってプルプル震えてる姿にムラムラきてるし、ある日ついに耐えられなくなってそのまま指をブラに引っ掛けて少し引っ張り、その勢いで後ろに引っ張られた彼女の項にチュッとする。



Twitter 2019.03.07
2019.03.28


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