それは君のおかげ


ドルチェを一口頬張った彼女の表情が綻んだ。それを噛み締めるように瞼をきゅっと閉じ、頬を膨らませる。繰り返されるその仕草はきっと飽きもせずに見ていられるだろう。最後まで大事に残していた苺を少し名残惜しそうに頬張ると、ひたすらに目の前のドルチェに夢中だった彼女の視線がすっとこちらに向けられた。

「そういえばブチャラティ、最近何か良いことでもあった?」

ごくんと苺を飲み込んだ彼女は、俺に問いかけてはいるが確信があるかのようにはっきりとした声でそう口にした。

「良いこと?」
「そう。最近何だか表情が柔らかいから」

何かあったんでしょと彼女は歯を見せて笑った。

「そうだな……」

自分では気が付かなかったが、表情に現れるほどのことがあっただろうか。ここ数日の出来事を頭の中で辿る。正解を貰えること期待するかのようにくりくりとした彼女の瞳がそんなオレの姿を捉えていた。
――ああ、なるほど。

「確かにあったよ、良いこと。それに今も」
「え、今も?」

待ち構えていたであろうものと少し違った回答に面食らった彼女は瞬きを繰り返した。

「あ、分かった! さっき食べた新作ピッツァが予想よりも美味しかったとか」

これに間違いないと彼女は指を立てて自信ありげに目を輝かせた。

「――そうだな、うん。美味かったよ」
「でしょう! 私も次来た時に食べてみようかな」
「ああ、また来よう」

今はまだ、今だからこそ感じられるこの気持ちをもう少し噛み締めていたい。自覚したからこそ見えてきた君の姿をもっと見つけていきたい。

そしていつか、今のオレは君が引き出したんだと伝えられたら。

「また良いことが続くと良いね、ブチャラティ」
「ああ」

君がいる限りきっと続いていくさ。



Twitter 2020.01.04
2021.04.08
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