きっともうすぐ来る未来


それは任務を済ませた帰りのこと。愛車に体を預け、一服をしている時だった。車を停めていた通りには一軒の花屋があり、女の店員が花の入ったいくつものバケツを運んでいる姿が目に入った。職場の見た目に反して想像よりも重労働であろう業務をこなすその女を何気なしに見ているとそいつと目が合った。すると女は人当たりの良い笑顔を浮かべながら抱えていたバケツをこちらに差し出した。

「いかがですか? 恋人へのプレゼントとして一輪」

そのバケツの中にあったのは沢山の真っ赤な薔薇だった。

「なんだ、オレか?」
「えぇ、彼女さんに惚れ直されたくはありませんか?」
「生憎だがあいつはオレのことが好きで好きでたまらないらしいからな」
「あら」

それでは必要ありませんねと女はくすくすと笑った。家で今か今かとオレの帰りを待ちわびているであろうあいつとは違う上品さのある笑みには好感が持てる。だがオレの頭に思い浮かんだのは大きく口を開けて笑うあいつの姿だった。

「いや、やっぱり一輪もらえるか?」
「! かしこまりました。少々お待ちください」

どこかにやりとした表情の女に上手いこと乗せられた気がしないでもないが、たまには良いだろう。

「はい、お待たせいたしました」

少しして完成した綺麗に包まれた薔薇を受け取る。そういえば今まで花なんてやったことはないが、いったいどんな反応を見せてくれるだろうか。

「ふふ、またのお越しをお待ちしております」
「今日はたまたまだ。もうこれっきりかもしれないぜ?」
「いえ、きっとまた近いうちにお越し頂けるかと思います」

女は自信ありげにそう答えた。



「もしもし、ホルマジオ? 仕事終わった?」
「あぁ、今から帰る」
「本当? 今日の夕食は自信があるの。早く帰ってきてね
「あぁ、分かった分かった」

――いったいどっちの方が好きで好きでたまらないのかしら。
車に乗り込みながら件の恋人へ連絡する男を見ながらそう思う。ラッピングされた薔薇を受け取った時や電話している今の表情、是非その彼女に見て頂きたいわ。
さて次に彼が来た時のために薔薇をもっと用意しておかないと。

きっと彼の次の注文は一〇八本の薔薇の花束でしょうから。



Twitter 2020.05.12
2020.11.29
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