この先も貴方と一緒に


「何やってんだよ」

キッチンで何かこそこそしている所に声をかけると一瞬宙に浮いたんじゃあねえかってほど体を震わせたこいつはまだ駄目の一点張りで、どうにかオレをキッチンから追い出そうとオレの体に両手で体重をかけてくる。正直簡単に抵抗出来た訳だが、あまりの必死さにそれも憚られ、大人しく押されるがままリビングへとやってきた。そこで座って待っててと残して再びキッチンへと帰って行ったあいつは、数分後少し緊張した面持ちで帰ってきた。だが何故か扉から半分だけ体を出した状態で一向に中へと入ってこない。

「ちょっと待ってね、あとちょっとだから……」

そわそわと小刻みに体を揺らしている。その視線はオレではなく壁の時計へと向けられていた。同じように視線をその時計へと向けるとカチッと両針が丁度天辺を指したところだった。

「誕生日おめでとう、レオーネ!」

気が付くとこいつは目の前にいて、満面の笑みと共に手にしていたケーキを差し出した。

「……忘れてた」
「うん、そうだと思った」

逆に予想通りだったのかオレの薄い反応にこいつは落胆することも無く、やっぱり誕生日ケーキには蝋燭は必要だよね!とどこかから取り出した蝋燭を意気揚々とケーキに立てていった。

「はい、火も付けた。さあ、一思いにいっちゃって下さい」
「……この歳にもなって蝋燭吹き消すのかよ」
「何言ってんの、こんなの一年に一回の誕生日にしか出来ないんだから」

さあさあと手を叩くこいつの様子に、やるまで続けるんだろうなと悟ったオレはふっと蝋燭へと息を吹きかける。灯っていた小さな炎は揺らめき、一瞬にして消えてしまった。

「うん、ありがとう。なんだかんだで私に付き合ってくれるレオーネが好きよ」
「っ……なんなんだよ、いきなり」
「しょうがないでしょ、そういうところが好きだなあと思ったんだもの」
恥ずかしげもなく好きだと言って笑いかけてくる姿に呆れて溜め息が零れた。……顔が熱いのは蝋燭のせいに決まってる。
「私にあなたの誕生日を一緒に過ごす権利をくれてありがとう」
――もしあなたの気が向いたら、来年も私にお祝いさせてね。
少し、ほんの少し切なさを含んだような笑みを向けたかと思うと何事もなかったかのようにこいつはナイフを手にケーキを切り分けだした。
なんなんだよ、ふざけんじゃあねえぞ。散々オレの調子狂わしておいて来年には終わってるとか思ってんのか。
「おい」
「ん?」
「そんな権利を欲しがる変わり者なんてなあ、おまえぐらいなんだよ……今後もおまえ以外に貰い手なんかいるわけねえだろ」
少し乱暴に体を抱き寄せるとこいつは泣きそうな、でも嬉しそうな表情で胸へと顔を埋めてくる。そして小さく、ありがとうと言う声が聞こえた気がした。



Twitter 2020.03.25
2020.04.23
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