彼は素直に甘えられない


私の膝の上に寝転んできた彼の頭におずおずと手を伸ばしてみると想像よりも柔らかい髪の手触りに驚いた。その手触りの良さに夢中で撫で続けていると、彼の方から私の掌に頭を擦り寄せてくる。いつも男らしく吊り上がった眉も今はへにゃりと下がっており、普段と違う様子にドキリとした。
いつも涼しい顔で飲んでいる彼が珍しく酔っ払っている。何か嫌なことがあったのだろうか、大変な仕事を抱えているのだろうか。

「ホルマジオ、何かあった?」
「んー」

私の問いに返ってきたのは曖昧な返事だけ。彼はくるりと体を動かすと私のお腹に顔を埋めた。寝心地がいい所を探しているのかもぞもぞと顔を動かされて擽ったい。そしてこの体制は私もだいぶ恥ずかしい。恥ずかしさを紛らわせるため自分のグラスに手を伸ばそうと彼の頭から手を離すと、顔を埋めたまま彼が私の名前を呼んだ。

「なぁ、もっと……」
「え、何が?」
「……」

まさかもっと頭撫でてくれってこと?思わず手で口元を覆う。ちょっと待って、ホルマジオが可愛い。
普段からは想像もできない彼を見せるアルコールの影響力に若干の恐怖を感じつつもやはり何かあったのかと心配にもなる。何があったのか分からないけれど、今私に出来る最善のことは彼を甘やかしてあげることなのだろう。それから私が彼が望む通り、頭を撫で続けていた。



「……あれ?」

気が付いたら私はベッドで寝ていた。いつの間にベッドまで移動していたのだろう。少し痛む頭を押さえながら起き上がり、記憶を掘り起こす。そうだ、ホルマジオと二人で飲んでて、彼が珍しく酔っていた。彼の昨夜の様子を思い出し、思わず頬が緩む。今日の彼の反応は見物かもしれない。

「よォ、起きたのか?何を朝からニヤニヤしてんだよ」
「あ、ホルマジオ」

寝室に顔を出した彼は私に近付いてくると私の頭を撫で、旋毛に唇を落とす。……あれ?なんかいつもと変わらない?

「ねぇ、ホルマジオ。昨日のことって覚えてる?」
「昨日?あぁ、おまえ途中で酔って寝ちまったもんな。ベッドに運んでる時も全く起きねぇしよォ」
「えっ!?酔っ払ってたのホルマジオの方でしょ?」
「何言ってんだ。夢でも見てたんじゃあねぇか」

夢だったの?あの可愛いホルマジオも?確かにベッドまで自力で来た記憶はないし、あの彼の姿も普段とはかけ離れてたけど。

「うーん?」
「そんなことよりよォ、さっさと飯食おうぜ。しょうがねぇからいつまでも夢の中にいる寝坊助はオレが連れてってやるよ」

そう言うと私を抱えてリビングへと向かうホルマジオ。ちらっとその表情を盗み見るがやはりいつもと変わらない。やっぱり夢だったのかなぁ。でもあんな風に私にももっと甘えてくれたらいいのになぁ。彼の胸に頭を預けてそんな事を考えていた私は、彼が眉を寄せる私の表情を見て少し照れくさそうに笑っていることに気付いていなかった。



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2019.12.21
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