太陽の象徴


「おや?それ、初めて見るピアスですね」

普段の私との変化を鋭く見抜いたフーゴのその言葉に過剰に反応して思わず肩を揺らした。その問いを肯定しながら、目線はフーゴからその背後へ移していく。奥でジョルノと談笑していたナランチャには先程のフーゴの声は聞こえなかったらしく、ホッと胸を撫で下ろした。

「よく似合っていますよ」
「あ、ありがとう」
「その少しオレンジがかった石はシトリンですか?……あぁ、なるほど」

何かを理解したのかフーゴが優しく微笑んだ。くそぉ、このIQ152の天才め…!宝石にも詳しいなんて。早々に自分の意図を見抜かれてしまった恥ずかしさから顔に熱が集まる。恐らく赤くなってしまっているだろう耳をピアスごと髪で隠した。

「貴方にもそんないじらしい一面があったんですね」
「どういう意味よ…!」

作った拳で軽くその胸を叩く。痛いですよと言いつつも、何のダメージもなさそうに笑い続けるフーゴにさらに数度拳を叩きつけた。

「なぁ…おまえら何やってんの?」

フーゴの背後から聞こえた声にピタッと腕の動きを止める。そーっと体を動かして声のした方を覗いてみれば、そこにはいつの間にかナランチャが立っていた。

「別になんでもありませんよ。…気になるんですか?」
「…そんなこと、言ってねぇだろ」
「おや、そうですか」

フッと鼻で笑うフーゴが癇に障ったのか、ナランチャは眉を吊り上げる。それを気にもとめず、フーゴはナランチャに聞こえないように手を添えながら私の耳元に顔を寄せた。

「頑張ってくださいね。上手くいくことを願ってますよ」

そう一言告げるとナランチャを一瞥してからフーゴは去っていった。
…本当にどこまで見透かされているんだろう。両手で頬を覆うと熱いと感じるほどの顔の熱が掌まで伝わってきた。

先日見つけた、このシトリンのピアス。太陽のようなオレンジ色の輝きを放つ、シトラスが語源らしいこの石。それは彼を表しているかのようで、興味深く見つめていると店員のお姉さんが私に教えてくれた。この石は希望や勇気などのエネルギーをもたらして人間関係を好転させるだけでなく、恋愛成就の力も持つのだと。それを聞いてすぐに購入することを決めた。
もしかしたら、とお互いの気持ちに気付いていながら気付かないふりをしていた。今の関係を変えるのが怖かったのだ。…一歩踏み出すきっかけが、勇気が欲しかった。
そうだ、決めたじゃあないか。いつか会えなくなってしまった時に、せめて告白すればよかったなんて後悔はしたくない。大丈夫、お姉さんにもフーゴにもエールを貰ったのだから。

「それ、フーゴのために付けてきたのかよ?」
「え、ちがっ」
「嫌、なんだけど」

「おまえが一番仲いいのも、近くにいるのも…オレじゃあなきゃ嫌だ」

その言葉と表情に、その先を期待してしまう。今は関係が変わってしまう不安よりも新たな関係への期待の方が勝っていた。

だってオレはおまえのこと、とさらに言葉を繋げようとするナランチャを真っ直ぐ見据えながら、そっとピアスに触れた。伝えたい、私もこの気持ちを。勇気を出すの。
私だってナランチャのことが―





「本当に世話が焼ける二人ですね。あのピアスよりぼくの方がよっぽど貢献してるじゃあないか」

少し離れた物陰に隠れ、いつの間にか集まっていたジョルノ達と二人の様子を伺う。二人の表情を見るに、どうやらついに収まるところに収まったらしい。やっと肩の荷が降りたと溜息を吐いた。彼女と話す度に突き刺さり続ける視線を受ける方の身にもなってほしい。あんなわかりやすい挑発に乗せられるほど、ナランチャが単純で良かった。ぐるりと周りを見ればみんなどこか嬉しそうだ。あのアバッキオまでも少し表情が柔らかい。その様子にぼくも自然と笑みが零れていた。

こんなにも皆に心配をかけたのだから、上手くいかないと承知しませんからね。



▽Twitterにてお題を頂き、書かせて頂いたお話

Twitter 2019.07.04
2019.07.13
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