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「正体を現せ!」

私のスーツの後ろ側から、フェイスマスクを上げたスカイハイの声。
そして、ヒーロー達の息を呑む音。
声無き声が、彼らの驚きを如実に伝えた。
鏡も無いココでは、私は私の姿を直接確認することはできないが、自身――H01の組成、プログラム、素材にいたるまで、この頭部に格納されたハードウェアにインプットされている。
そこから分かるのは「人間的感覚」でいえば、私の顔は「髑髏に良く似ている。」ということ。
真っ赤な夕日に照らされた金属の皮膚をもつ姿は、彼らNEXTよりもよほど“人間崩れ”“人間もどき”だ。
この恐ろしい狂気の産物たる顔を見られたくは無かったのに。

この酷な夢の中での私は「悪役」で、彼らヒーローの敵で、醜悪で、機械だから非情で残酷で・・・
自分にいくら夢だと言い聞かせても、この仕打ちはさすがに辛い。
私が正しく起動していた時間なんてものはまだ一日にも満たないけれど、その時間全てにおいて、私は画面越しに応援していた彼らに敵意を向けられていた。
打たれ弱いとでも、心が弱いとでも、何と言われようとも構わない。
ただ、私は“大好きだった”彼らに冷たい目で見られることに「辛い、怖い、苦しい、助けて」と涙を流すことさえできない体に、そしてこれから彼らを最も底意地の悪くて卑劣な罠へと連れて行くのだという現実にもう耐えられそうもなかったのだ。
私の心がマイナスの感情支配されるのを待っていたかのように、体は勝手に動き出す。
手始めに掴んだのは、体を拘束するスカイハイの腕だった。
骨を折るのではないかという勢いで掴んだ腕を自分に引き込むように引っ張りながら体勢を変えれば、彼は一本背負いの後に地面に叩きつけられた。

「スカイハイ!」
コンクリートの床に蜘蛛の巣のような皹が入るほどの衝撃に、彼はかなりのダメージを受けたらしく、即座に起き上がる気配はない。
それを一瞥した私が顔をあげ、フェイスマスクを被り直すのが、戦闘の合図だった。

一つの拳を避ければ、後ろから雷撃と鋭い氷が迫ってくる。
それを、避ける私は酷く冷静だった。
ルナティックの時には、あんなにも死を恐れて無い筈の心臓が縮み上がる思いをしたというのに。
相手がヒーローであるというだけで、こんなにも自分が醜い悪であるかのように思う――もう、いっそ消えてしまいたいくらいに。
ここで、私が壊れてしまえば、彼らは辛い思いなんてしない・・・そう思っていても、体は勝手に動いて彼らを攻撃する。

##ナ###ラ、モウ###イッ##ソ###

ノイズ交じりの信号が基盤を駆け抜ける。

#####コノ###手#デ##、コロ#シテ####シ#マエ####

システムから流れ込んでくるかのような、ヒーローへの――いや、NEXTへの嫌悪、憎悪が、私を飲み込んだ。

##NEXTハ敵###コロセ###

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