海老の中の人の中の人っていうのは、別に背腸とか、そういう意味じゃなくて。
なんでか知らないけれど、物凄い大ヒットをかました虎さん&兎さんってヒーローアニメに登場する、偽者ワイルドタイガーを見た目からファンがブラックタイガー=海老と呼ぶわけで。
で、その中には実はアンドロイドが入ってたんだよってストーリーなわけで。


「これが、ワイルドタイガーの代役かね?」
ベッドで眠ったその後の記憶はこの台詞から始まる。
目を閉じているからか視界は真っ暗、ただただ何台もの機械が動いているような無機質な音と人の声がする。

「えぇ。もともと生身の“NEXT”の代わりをさせるために、特別にこの個体だけには“人間らしい感情を理解する人工知能”をインストールしてあります。

 感情なんてものは、アンドロイドに不要なセーフティをかける邪魔なものですが、他のヒーロー達とのコミュニケーションの可能性がある以上“アンドロイドらしさ”は余計な疑念を招きますので。」
なんだか聞き覚えのある単語と、声に頭がまっしろになった。
え、あの“NEXT”とか、この前アニメで聞いた覚えがあるんですが。

「なるほど。それならば他のヒーロー達もコレが偽者のワイルドタイガーであることには気付くまい。」
その台詞と、私の視界が開けるのは同時だった。
金属で覆われた部屋、もはや何に使われるのか予想もできない大きな機械。
すぐ目の前にあるガラスの壁、ガラスに映る私の姿はまるで骸骨のような機械の塊、私の骨のような手足にまとわり付く数多のコード。
そして、ガラス壁をはさんだ向こう側にいたのは、あのアニメのラスボス――マーベリックと科学者ロトワングだった。

どうやら私は、偽者ワイルドタイガーの中に入っているアンドロイドの中に入っている“人間らしい感情を理解する人工知能”になってしまったらしい。
つまり、海老の中の人の中の人になってしまったわけである。

ああ、なんて酷い夢だ。
せめてそこはヒーローに助けられるシュテルンビルト住人Dあたりが良かった。

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