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システムをジャックして、戦いを記録しているフォルダを読み込む。
うわぁ、普通の人間だったら死んでるよこれ。と言いたくなる程のH01の攻撃の履歴をロードしつつ、視覚センサーと四肢の操作回路を繋ぎ直す。
点滴の時のように、体中の血管に冷たい液体が入り込むようなむずがゆい感覚と共に、視界が開けた。

背中から羽交い絞めにする緑の光を灯した腕の向こうに見えるのはバーナビーの姿。

「心配すんな。あたる直前で俺が避ける!」

背後から聞こえてきた声に、画面越しに聞いた同じ台詞を思い出して涙が出そうになった。
ああ、このシーンですか、くそう。

「でもっ」

「大丈夫だって!!」

バーナビーの案じる声にも、陽気に答えたワイルドタイガー。
しかし、そこに混じる微かな不安と恐怖を『私』は知っている。
抵抗するモーションを続けながら、気づかれないようにため息をついた。

本当は、斉藤さんがパスワードを見つけるまでは『私』が責任もって時間稼ぎしようかと思っていたのに。
ここでH01が倒せなければ、人質となっているHERO達の方が限界を迎えるだろう。
思い通りにはいかない展開に若干の悔しさと呆れさえ感じながらも、不安を感じることはなかった。

――知っているからではない、信じているからだ。

画面越しで見ていた時から、ワイルドタイガーは次元をこえて「私達」のHEROだったから。
ほんの少し、同じ次元を敵としてだけれども生きて、触れてみて、やっぱりこの“おじさん”は凄いなって思えたから。
その上、バーナビーに言及する必要はもうないだろう、何せ彼は、私の「  」。
だから・・・

「早く打て!早くしろバニー!!」

ワイルドタイガーの咆哮が空間の隅々まで轟いた時、バーナビーは銃の引き金を引いた。
刹那、H01が感知できたのは衝撃と爆音とレーザーの熱量だった。


「貴方達なら大丈夫です、ヒーローさん。」

視界が光で埋め尽くされる直前、私は振り向いてワイルドタイガーの肩をそっと押した。
バランスを崩し、倒れるようにレーザーの軌道から逸れていく体から「は?」と間抜けな声が聞こえたのには、思わず笑ってしまった。

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