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この体の右腕が掴んでいるのは折紙サイクロンの首。
苦しそうにもがく彼だが、体力が限界にきているのか、その抵抗は弱弱しい。
床にはいくつもの陥没と焦げ跡と、倒れ伏せるヒーロー達の姿。
私・・・つまり「人間らしい感情を理解する人工知能」がダウンしていた間に、大分派手に暴れたらしい・・・主に私ことH01が。
あまりの惨状に呆れていると、視界の端で動く影に気付いた。

影の正体は、震える足を叱咤して立ち上がるブルーローズ。それに続くように、他のヒーロー達も体を起こす。
もう息も絶え絶えで、疲労困憊だろうことは私にもわかる。
けれど、彼らの目には未だ消えること無い意思が宿っている。
その力強い視線に“私は微笑んだ”。
それと同時に私の左半身は、夕日を受けて宝石のように輝く氷に包まれた。

「やった!」

歓喜の声を上げたのは誰だったかわからない。
けれど、全員がH01がもう二度と身動きなど取れないだろうと予測し、口元に笑みを浮かべる。

――だが、それではいけない。

右手に掴んだ折紙サイクロンをヒーロー達の方に放ると、スカイハイが風とその身で彼を受け止める。
それを確認する前に、左腕を力任せに振ればパキリと音を立てて氷は小さな結晶となって霧散した。
だが、これも彼らの予想の範疇だったらしい。
体勢を立て直した折紙サイクロンを含めた全員が、すばやく身構えるのが視覚センサーに写った。

「そう、それでいい。そして、よく見極めて。」

音を発したのは、H01の発声器官だった。
ワイルドタイガーに酷似したスーツから、少女の声が発せられたのが以外だったのか、ヒーロー達は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
それに、クスクスと小さく笑いながら、私は軽く地を蹴って彼らに拳を突き出した。

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