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「何故、何故なのですか!?」
その夜の月は、真っ赤だった。 闇がかぱりと大きく口を開けたような満月は、白く儚い月を愛でる日本の妖怪には、少しばかり気味が悪く感じられた。
「我らの性を悪と仰るのは、何故か!!
人間の生血を啜り、永久に生きながらえることが我らの性にして業。
それを我らに与えたのは、貴女ご自身であられるというのに!!」
赤い光を背にそう嘆く男の声に、リクオは目を見開いた。 彼の後ろに控える奴良組一門の百鬼達も、未だ構えを解かないゆらと竜二も、皆それぞれに驚いた。 気が狂ったかのように喚く西洋の鬼――吸血鬼(ヴァンパイア)が今しがた「貴女」と言いながらその視線で指したのは、ほかならぬ『鬼狩り』(ヴァンパイアハンター)の少女であったのだから。 [*prev] [next#]1/3
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