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過去、そいつと喋ったのは、たった1度だけだった
2流映画のように、ありふれた小説か漫画のように、薄暗い路地で数人の不良に囲まれていたところを、縁あって助けてやった時、それきりだった

「大丈夫か」

「空条・・・承太郎」

見覚えのある制服から同じ学校の女子生徒と気付いた
ただ、一つ奇妙なことに、この女は目の前で大の男を数人まとめてボコボコにした自身を恐れるでもなく、教室で顔をあわせる女子生徒のように騒ぐわけでもなかった
淡々と名前を口にしたそいつは、隙のない立ち振る舞いだと今更気付く

「俺を知ってるのか」

「一応、同じクラスなのだけれど」

そう言われて、顔には出さずに驚いた
今までこんな女が居たことに気付かなかったというのか
表情という表情もなく、薄い空気の仮面をかぶったように感情一つ見せない女に、珍しく恐怖を覚えた

「まぁ、クラスじゃ目立たないから、君が私を知らなくても無理はない」

「私は苗字 名前。助けてくれてありがとう、空条。それじゃ、明日教室で」

スラスラと事務的にそういった女は、あっさりと人通りの多い表通りへと姿を消した
その奇妙な女が気になって、珍しく素直に女に言われたとおりに次の日も学校へと赴いた

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