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世界は、実に単純に出来ている
この我々が生きる空間に条理も不条理も、ましてや正義や悪などといったものはそもそも存在し得ないのだ
世界はあくまで我々人間個人が、その頭の中で作り上げたある種の妄想といっても過言ではない
世界の始まりは自身の誕生と同じくしておこり、また自身が死ぬ時には世界の存在もまた失われる
世界は生きる全ての生き物のものではない、唯一人自分自身が勝手に作り上げて勝手に愉悦し勝手に嘆いては勝手に壊すものなのだ
目の前で杯を傾ける自分の声を聞きながら、男は渋い顔をした。
私の言葉が、魔術師でもある彼が前提としている「世界」の定義に、あまりに反しているためだろう。
彼にとって「世界」とはある意味我々人間を捕らえる網である、人を人たらしめるべく繋ぎ止める楔でもあり、それは数多の人々の集合無意識によって形成される、個人では到底干渉もできない絶対の不変なのだろう。
かつては「私自身」でもあった言峰の考えに、名前は哂った。
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