「名前ちゃんはさー、あの4人だったら誰がタイプなのー??」
「ほんとほんと!仲良いよね〜」




日が徐々に傾き出す16時過ぎ。
英語研究室の部屋には私に多分懐いている女子生徒数名とその子達の英語の教科を担当する私。

その子達の目は、窓から入る西日のせいなのかキラキラと輝いている。私には持ち合わせてないその宝石はとても眩しく羨ましく感じた。




『こら、ちゃんと先生って呼びなさい』
「ええー」
「で!誰がタイプなのー?!」




学生ならではなくだらない質問にどう返事しようか迷っていると、生徒や教師を収集する為の放送がなった。

その音に気づいていないこの子達はまだ私の周りでピーピーと騒いでいる。その放送を聴き逃してはならないとその子達に向かって“静かに”の合図である唇に人差し指を添えて見せた。




[職員会議を16時半より始めます、学年担任は職員室に集まってください]




放送が終わり静かにしていた生徒を見ると、そそくさと帰る準備を始めていた。私が今の放送の該当者だと理解した行動だった。
授業でわからない箇所を聞きに来た生徒達だ、比較的聞き分けのいい方だと思う。
思春期ならではの問いかけ以外は。




『分からない所あったらまた聞きにおいで』
「うん!」
「また恋バナしよーね!」




部屋の出口まで生徒達を見送る。しばらく生徒達の後ろ姿を見つめていると、彼女達は廊下の1番奥の階段に差し掛かった時にもう一度私の方を向き手を振って姿を消した。それを確認した私は手で支えていた扉を閉めて、空きっぱなしの窓辺に近づく。
校舎の三階にあるこの部屋は校庭も校門もよく見える、学園祭で最後花火を打ち上げる時もこの部屋が1番見栄えがいいと思う。それぐらい見晴らしがよく、風も心地いい。

さっき階段を降りていった生徒達がもう校門を出るため校庭を歩いているのが目に入った。
私の視線に気づいた1人が後ろ歩きをしながら私に手を振る。
それに小さく振り返し、窓とカーテンを閉めた。


子どもが好きかと言われたらそうでも無い、英語が好きかと言われても前者と同じだ。
なんとなく入学した大学が国際系で、なんとなく中高の教員免許を取得。なんとなく外資系で働きたかったがこんな志望動機も曖昧な奴を取ってくれる会社はなく、成り行きでこの鬼滅学園に就職した。




「不審者情報についてですが〜…」




そして今日もなんとなく授業をこなし、質問に来た生徒の相手をし、考え事をしながら職員室で職員会議を聞いている。

早く終わらないかな、なんて頬杖をつきながらなかなか進まない時計の針を見つめていると私のデスクに小さく折りたたまれたメモ用紙が飛んできた。
隣にいる年配のお局先生に見つからない様に体に隠してこっそり開ける。



[今日は不死川部屋、20時集合]



と乱雑に書かれており、その字は多分先程の女子生徒が言っていた4人のうちの誰かの物だ。
そしてそのメンバーである斜め前の席に座っている美術教師の宇髄天元、その隣の歴史教師の煉獄杏寿郎が私に向かって親指を立てている。
少し遠くに離れた席の体育教師である冨岡義勇は私の方をちらちらと見て仲間に入れてほしそうだ。

そして今回の飲み会会場に指定された、数学教師の不死川実弥は職員会議の書記を任されておりこちらに見向きもしない。



そう、私達は同僚であり幼なじみだ。
幼小中高と一緒だったが大学はそれぞれの夢を追い別れた後就職先が全員一緒だった。
腐れ縁と言ったらいいのだろう。
私には女子生徒達が思うような感情は一切ない。ただの腐れ縁、そして居心地の良い存在達だ。

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