02






目を開くとそこは京都の様な街並みだった。
木造建築が並んでおり、街頭もなく真っ暗だ。何軒か軒先に提灯が吊ってあり、ぼんやりと砂煙が立ちそうな道を照らしている。

かばんにぶら下げていた藤のお守りを握るとぼろっと崩れる感覚。目線をそっちに向けるとそれは炭になって散っていった。
唯一の心の支えまでなくなり、愕然としたが意外と頭は冷静でとりあえず誰かに助けを求めようと足を動かした。
一体ここはどこなのだろう、日本であるのは確かなようだがさっきまでいた所とは全く違う。知っているようで知らない世界、不安ばかりが募る。

灯りのついた家の前まで着き、扉をノックしようとしたその時、中から女性の悲鳴が聞こえた。

「ごめんなさい、ごめんなさい!!!」

その異常な声に驚いた。
叩こうと思っていた扉は小さく開いていて、失礼と思いつつその隙間から中を覗くと玄関先は真っ赤に塗られ幾つもの女性が転がっている。

声が出そうになったが、慌てて両手で口を抑え数回深呼吸をした。沢山の女性達が横たわっている真ん中に悲鳴をあげたであろう女の子が両肩を震わせながら前に立つ男性に謝っている。

その女の子は男に何かを伝えているが自分の鼓動が煩く聞こえない、男は冷たく呆れた目でその子を見つめ次の瞬間扉が赤くそまった。


気づくと目の前には先ほどの男、手にはあの女の子であろう首があった。
腰が抜けて後ろにズルズルとさがる事しかできず、血生臭さで気を失いそうだった。


『お前、稀血だなぁ』


男は嬉しそうに舌舐めずりをし、いつ擦りむけたのか分からない膝を指差した。
手に持っていた首を投げ捨て、じわじわと私に近づく。
嬉しそうにぶつぶつと独り言を言うその男はあっという間に私に近づき髪の毛を掴み、家の方へ歩き出す。頭皮が千切れてしまいそうな力にまた悲鳴があがる。
抜けた腰を何とかうごかしながら抵抗するも、人とは思えぬ力で押さえつけ引きづられる。


男が家の扉に手をかけた時、私の髪を掴んでいた腕が吹き飛んだ。
気がつくと私は、違う人の腕の中にいた。先程の男とは違い優しい手で抱えられている。
その人は私の顔を見て一瞬目を見開いたが、すぐ真顔に戻り先程の男に目線を戻した。

それを最後に私は意識を手放した。



次に目を覚ましたのはどこかの病室で、外では男の子達のわいわいとした声が聞こえる。
開いた扉からはツインテールに蝶の髪飾りをした女の子が入って来た。

「お目覚めですか、食事は取れそうですか?」

ちゃきちゃきとした物言いでベッド横の小さな机におにぎりとお茶を置いて出て行った。
身体は痛むが無理やり起こし、少し硬めのおにぎりを一口頬張った。

塩がきいててしょっぱく、涙が出た。





第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -