【使い魔の】お前らを呼んだ覚えはねぇよ!【召喚失敗】後日A


※【使い魔の】お前らを呼んだ覚えはねぇよ!【召喚失敗】の後日談。
※パターンA…火神がキセキと契約した場合の話。
※あれからすぐ後の話。そんなに日数は経ってない。

上記を理解した方は下へどうぞ。





〜全壊までのあらすじ〜
↑間違えた。つ(前回までのあらすじ)

悪魔召喚師の火神は親に言われるがまま、使い魔を召喚すべく術式を発動。その瞬間出てくるはずだった悪魔を押しのけて登場したのは有名な悪魔戦隊カラフルレンジャー『キセキ』だった。リーダーのレッドは「ブラックはどこだ」と火神に問う。
ブラック―――それは火神の相棒の名だ。自身の大切な相棒を守るため口を閉ざす火神に、キセキはその魔の手を伸ばす。直後、ブラックが目が眩むほどの雷と共に参上した。そこで告げられる衝撃の事実。なんと、ブラックは神になっていたのだ…。唖然とするキセキ。そこに崇高なる白き甘味を手に現れるブラックの契約者…。キセキ達はかの手からブラックを救い出すべく、そして契約者は悪魔より自身の神を守るべく、その場で戦いの火蓋が切られた。崩落する建物に、燃える見慣れた家具。惨状が視界を焼いていく。もうやめてくれ、笑い出しそうな絶望が脳裏を支配した。そんな火神の傍に、寄り添うように立つブラック。激しく交戦する彼等を見つめ、重苦しい空気の中、彼は口を開いた。

「ちょwww火神くん家爆発したなうwwwつぶやいていいですかwww」


***





新築の庭付き一戸建ての家の前で、顔面偏差値と平均身長に異常をきたす男たちが集まっていた。
揃いも揃ってカラフルな風貌に、通りかかった人達がちらりと視線を寄越していくのもなんのその。
まったく気にした様子もなく、楽しそうに笑った高尾が大袈裟な動作で片手を上げた。


「というわけで!今日からここが俺たちの新居になります!」
「「「「おおー」」」」


感嘆するように声をあげて何となくノリで拍手までする黄瀬たちを見て、赤司が満足そうに頷く。
彼らから少し離れたところで疲れたように肩を落とす火神に気付いて、黒子がそっとその傍に近寄った。


「お疲れですね」
「そりゃ、ここ連日の攻防を考えりゃ疲れもするだろ」
「すみません」


久しぶりの再会にテンションが上がったのは分からないでもないが、はしゃぎすぎて火神の家を全壊させた挙句、黒子の家に泊まる云々で街一つを破壊しかけた事を思い出して火神は重く溜息を落とした。
黒子の武力介入によって事無きを得たが(彼らは小一時間正座させられていた)、それにしたって物騒な連中には違い無い。


「つーかこの家どうやって用意したんだよ…俺ら全員が住んでも大丈夫なくらいデカイって…」
「ああ、別に後ろ暗い事は何もないので安心してください。ちょっと僕の信zy…間違えました、知り合いに話をしたらくれたんです」
「おい、今信者って」
「気のせいです」


さらっと言いかけた事を流して、楽しそうに家の中に駆け出していくキセキ達の背中に視線をやる黒子。
その瞳にはどこまでも優しい色が浮かんでいた。
そんな黒子を見下ろして、火神は信者が居てもおかしくはないなと思う。
見た目は火神より幼く見えるが、千年近く生きている神格持ちのアヤカシだ。
どこぞの社で大切に祀られていても不思議ではない。
本人から聞くまで人間じゃないなんて気付きもしなかったが。
バスケが好きだから人に混じってやろうなんて、普通のアヤカシは考えないだろう。
やっぱり元は人間だったから、感覚はそのままなんだろうか。
どちらにしても悪魔召喚師の火神には決して理解出来ない感覚であることは間違いない。


「それにしても…マジで俺ら全員で住む事になるとはな…」
「そうですね。そこは僕も吃驚です。でも仕方ありません」
「だな…あいつら別で住むってなると確実に暴れるし」
「ふふ」


笑い事じゃねーんだけど、と下の方にある小さな頭を小突くと、「すみません」と謝罪が返ってきた。しかし声は存分に楽しそうだ。


「笑ってんじゃねーか」
「まぁ…嬉しいですよ。まるで昔に戻ったみたいで」
「昔、ねぇ」
「ああ、でもあの頃には高尾くんも火神くんもいませんでしたから、今のほうがずっと賑やかでしょうけど」
「だろうな。つーかあいつの順応力はなんなんだ?なんであんなあっさりキセキ連中と絡めんだよ…」
「高尾くんですからねぇ」


昔から何でも楽しんでしまえる子でしたから、と懐かしそうに目を細める黒子。
高尾との見えない絆を見せ付けられたようで、なんとなく面白くない火神は「へぇ」と気の無い返事を返した。
彼らの出会いは軽く話に聞いただけであるし、そもそも火神は練習試合に会っただけの高尾について何も知らない。
思い返せば黒子に対して親しげな態度を取っていたようにも思うが、それだって曖昧だ。
黒子は自分の事を積極的に話すタイプではない。
その上、聞かれなければ面倒がって話さない事も多いようだった。これは最近知った事だが。


「そういえば、火神くんのご両親から『息子をよろしく頼む』と言われました」
「いつの間に連絡取ったんだ!?」
「火神くんの家が大爆発した直後ですね。さすがに申し訳なかったので」
「俺らが戦ってる時にかよ…」


熱海からの旅行を終え、帰宅する家がないと知った両親はいい機会だと海外で過ごす事にしたらしく、その足で空港まで行ったらしい。
息子に連絡が来たのは彼らが外国の地に足を踏み入れてからだった。
完全に事後承諾である。
自分の親ながら、そのフットワークの軽さが恨めしい。


「ありがとうございます、火神くん」
「あ?」


急に言われた言葉に意味が分からなくて首を傾げる火神を、どこまでも穏やかな瞳が捉える。
まっすぐに向けられるそれは、彼の正体を知った今も変わらない。
濁りの無い綺麗な瞳だと、火神は常々思っていた。


「僕が人間じゃないと知っても何も変わらなかった君に、感謝してるんですよ。ヒトは、異端を嫌う生き物ですから」
「それ、召喚師の俺に言っても無意味じゃね?」
「ふふ、そうですね」
「大体、ヒトじゃなくたってお前はお前だろ。バスケで力使ってるわけでもないんだろうし」
「当たり前です。スポーツは正々堂々とやるから面白いんじゃないですか」
「だな。お前がそういうやつだって俺は知ってる。だから心配はしてねーよ」


くしゃりとその水色の髪を掻き乱すように撫でてやれば、また小さく笑い声がした。
控えめで、間違っても高尾や火神のような豪快さはない。
けれども本当に楽しんで喜んでいるのが分かるような、優しい声だ。


「あー!!なにやってんスか!二人とも!!」
「入ってこないと思ったら…何をしているのだよ?」
「おいこら火神、テツに触んな!」
「部屋いっぱいあるよ、黒ちん。俺と一緒の部屋にしよー」
「何を言っているんだ、敦。テツヤは僕と同じ部屋に決まっているだろう」
「いやいやいや!そこは契約者の俺だろ!だよね、テッちゃん!」


まだ玄関先に居た黒子と火神の元に駆け寄るように集まって、それぞれ世話しなく話しかけてくる。
話を聞く限り、どうやら部屋割りで揉めているようだ。
全員が黒子と同じ部屋を希望しているらしく、火神は参戦するべきだろうかと悩んだ。


「ここは公平にジャンケンで」
「よし来い!」
「よし任せろ」
「だ、ダメっス!目が異常に良いのが二人も居る!」
「てめ、天帝の目発動してんじゃねぇよ!」
「知るか。僕は全力でこの戦いに挑む!」
「赤司ェ」
「高尾!お前も集中するんじゃないのだよ!」
「俺はテッちゃんと同じ部屋になるために人事を尽くすのだよ☆」
「高尾おおおおおおおおお!!」


随分仲が良い事だと逆に感心していた火神は、視線を先ほどから口を開いていない黒子に向けた。
その表情はまるで出来の悪い我が子を見守る親のようである。


「僕、出来れば一人部屋がいいんですけど」
「部屋余ってんだから一人で一室使えばいいよな」
「ですよね」
「…まぁあいつらの言い分も分からなくはねーけど」
「?」
「俺も、その、お前と同じ部屋が良いっつーか」
「え」
「「「「「「そこ、抜け駆け禁止!!!」」」」」」


先ほどから言い争っていたとは思えないシンクロした文句に、思わずびくりと肩を震わせた火神だった。





結局、黒子が一人部屋を希望したという理由で渋々引き下がった面々は、今後暮らしていく上で必要になる役割を決めるためにペンを片手に一枚の紙を見下ろしていた。
そこには料理担当・掃除担当・洗濯担当などと書かれており、曜日ごとに振り分けるようになっている。
キセキは悪魔だが、どうやら普通の人間と同じように暮らすらしい。
というか、黒子と暮らしていた時はそうやって過ごしていたようだった。


「でも俺、最近の家電とかよくわかんないよー?」
「説明してやる。洗濯機くらいは回せるだろう。これだけの人数だ。量も半端ではないし、洗濯は敦と大輝に任せるか」
「おー」
「そうっスね!じゃあ俺は掃除担当するっス!黒子っちの部屋は任せてくだs」
「阻止。各部屋は自分で!」
「…分かったっスよ…チッ」
「涼太?」
「さーせん!」
「じゃあ俺は料理担当にすっかなー。テッちゃんも料理ね!掃除が黄瀬だけだと大変だから赤司も掃除担当で」
「分かった」
「赤司が掃除…だと…」
「ありえないのだよ…」
「赤司っちが…掃除、する…?」
「どういう意味だ、お前ら」


すでに火神は料理担当に決まっているので、楽しそうに話す彼らの様子を傍観していた。
赤司から視線を逸らして縮こまるキセキ四人の姿に、力関係が分かりやすいなと苦笑する。


「脅しちゃだめですよ、赤司くん」
「そうだねテツヤさすが僕の天使」
「優しいテッちゃんさすが俺の神様!」


キセキと呼ばれるほどの強い悪魔でも赤司には逆らわない。
が、それだけ強い力を持つ赤司でさえ黒子には決して逆らおうとしないのだから、惚れた弱みとは恐ろしい。
全力で戦えばどちらが勝つのだろうかと少し興味もあるが、かといってそんな状況になれば日本は終わるだろうから、知る機会はこなくていいと思う。
ふと、黒子と視線が交差した。
細められた瞳はやわらかな色を乗せて火神を映す。


「見惚れてんじゃねーよ、バ火神」


いつのまに傍に来たのか。
不機嫌さを隠しもしないで青峰が唸る。
図星を指された気まずさもあって、火神は眉を顰めて青峰を睨みつけた。


「なんか用かよ」
「別に?ただお前がテツばっか見てるから警告してやろうと思って」
「ああ?」
「言っとくけどな、人間にテツはやらねーから」
「知らねーな。んなの、あいつが決める事だろ」
「ハッ!俺らから、俺から奪えると思ってんのかよ!」
「黒子はお前のもんじゃねーだろうが!アホ峰!」
「ああ!?誰がアホだ!」
「お前だって人の事バカっつっただろ!」
「俺はいいんだよ!」
「これだからキセキは!!」


ぎゃあぎゃあと声を荒げて言い合う二人を見ていた黒子が、ぱちりと目を瞬いた。


「仲良いですねぇ」
「そうっすね!青峰っちと気が合うんじゃないっスか?」
「そうだねー。黒ちんとより合うんじゃない?」
「ああ。まったくもって仲が良いのだよ。羨ましくはないがな」
「うんうん!青峰と火神って仲良しだよな!俺とテッちゃんみたいに!」
「良い遊び相手が出来て良かったな。大輝、火神。ああ、テツヤは僕と遊ぶから気にしなくていいぞ」
「「?!」」


黒子の意見に同意して、全力で蹴り落とそうとする彼らに顔色を変える火神と青峰。
慌てて弁明するも、あまり意味の分かっていない黒子には効果が薄いようだった。





「さて、僕の荷物は転送すればいいだけですし、火神くんは大丈夫ですか?」
「あー、大体のもんは吹っ飛んだし、当面の着替えとかは買ってあるから後は追々だな」
「ブフォwww吹っ飛んだwwwとかwww」
「お前等のせいだろうが!」
「そうですよ。君達が暴れたりしなければ火神くんに迷惑も掛からなかったんですから。反省してください」
「「「「「すみませんでしたー!」」」」」
「お前等ってホント……いいわ、もう」


がくりと肩を落とした火神を、少し申し訳なさそうな顔をした黒子が見上げる。
もういいと言うようにその頭を撫でてやると、ほっとしたように笑みを乗せた。
それを見て、火神は随分と分かりやすく表情を出すようになったなと思う。
今まではその完璧なポーカーフェイスのおかげで何を考えているのか分かり辛かったが、最近は多く表情を変えるようになった。
火神が彼の正体を知ったからか。キセキと再会したからか。高尾が傍にいるからか。
理由は分からないし、後半の理由であればあまり歓迎は出来ないが、少しは近付けたのならいい。
「引越しには蕎麦だろ!」と高尾が言うので出前を頼むことになったが、サイドメニューがどうたら言い出したキセキ達のせいで注文するのはもう少し先になりそうだ。


「火神は何にするんスか?」
「メニュー見せてくれ」
「火神ってめっちゃ食うんだろ?蕎麦屋マジ大変じゃねwww」
「じゃあ別の店でピザとか頼むのはー?」
「ああ、いいんじゃね?俺、これとこれのハーフアンドハーフな」
「そんなに食べるのか?残すのなら頼むべきではないのだよ。あまり金銭面で黒子に負担を掛けたくないからな」
「大丈夫だ、真太郎。テツヤに僕等を養わせる気はない。金の事なら気にするな。僕がなんとかしよう」
「赤司くん、洗脳はアウトですよ?」


少し前までは自分が居た場所に違う誰かが居る。
それはとても気に食わないし、譲りたくはない。
それでも幸せそうに笑う黒子を見ていたら、当分はこんな関係でもいいかと思うくらいには、火神もキセキも高尾もお互いを気に入っていたりするのだった。本人には絶対に言わないが。

→あとがき
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