※TOSパロ。
※notクロスオーバー。元を知らなくても問題ないです。
※黒子が神子で天使になります。世界再生の旅に同行するのはキセキ。





箱舟定員オーバー





かつて世界の中心にマナを生む大樹があった。
しかし争いで樹は枯れかわりに勇者の命がマナになった。
それを嘆いた女神は、天へ消えた。
この時女神は天使を遣わした。

『私が眠れば、世界は滅ぶ。私を目覚めさせよ』

天使は神子を生み、神子は天へ続く塔を目指す。
―――これが世界再生の始まりである。





世界再生の旅…この世界、シルヴァラントの『マナ』と呼ばれる生命の源が不足している現状を何とかするため、選ばれた神子がいくつかの封印を解きながら『救いの塔』を目指す旅の事である。
今まで歴代の神子が何度も挑戦しているが、ここ約800年ほど誰も成功しておらず、シルヴァラントは衰退の一途を辿っていた。
そんな中、衰退した世界シルヴァラントを救う『再生の神子』である黒子は、今日も今日とて過剰とも言えるカラフルな幼馴染たちの鉄壁の守りのもと、確実に救いの塔への旅路を進んでいた。


「黒子っちに何しやがる!魔神閃空破!!」
「雑魚が調子に乗ってんじゃねーぞ!驟雨双破斬!!」
「大人しく消えなよ。岩砕襲撃!!」
「よくもテツヤの背後から攻撃できたものだな、畜生め!焔の御志よ、災いを灰塵と化せ!エクスプロード!」
「黒子、怪我はしてないか?念のためだ、ヒール!」


たかがウルフ一匹に彼らの攻撃が集中する。
ちなみに黒子は掠り傷ひとつ負っていない。ヒールなんて中級治癒術はTPが勿体無いので止めていただきたいのだが、以前緑間にそれとなく伝えた際にはさらっと流されたので言っても無駄だろう。
そもそも彼らの攻撃も青峰が言うように『雑魚』相手に使うものではない。


「あー、大丈夫か?」
「火神くん…ええ、僕は問題ありません」


呆れた顔をしてウルフを殲滅した彼ら見ていた火神が、そっと隣に立って見下ろしてきたので頷く。
大丈夫もなにもない。ウルフの姿を見た彼らが即行で攻撃を仕掛けたお陰で、黒子は背後にウルフが居ることさえ黄瀬と青峰の特攻後に知ったくらいだ。というか正直な話、さすがに殺気を持って襲い掛かられていればいくら黒子でも気付いただろうから、あれは黒子の背後をただ横切ろうとしただけだと思うのだが。


「相変わらずあいつら容赦ねぇな…」
「なんだか申し訳なくなります」


すでに事切れたウルフからアイテムを引っ剥がす彼らを見て遠い目をした二人だった。
モンスターとエンカウントを防ぐアイテム『ホーリーボトル』を使っていないにも関わらず、敵は基本こちらの姿を視認した途端、猛ダッシュで逃げる。
たまに勇気があるのか無謀なのか襲ってくるモンスターも居るのだが、現状を見てもらえば分かるとおり、彼らの敵ではない。
むしろ逆にモンスター相手に同情さえ沸いてくるほどの徹底した排除っぷりに涙が出そうだ。


「もう大丈夫っすよ、黒子っち!」
「テツヤに仇なす敵は何者でも殲滅するから安心するといい」
「…ありがとうございます」


先ほどまで鬼の形相でモンスターを嬲っていた人物とは思えない晴れやかな笑顔に、黒子はつっこむ事を放棄してお礼を言う。
満足そうに笑って歩き出した彼らに周囲を取り囲まれながら、黒子は小さく溜息を付きつつ目的地へ向けて足を動かした。


「どうしたのだよ、黒子。疲れたのか?」


そんな黒子に目ざとく気付いた緑間がツンデレのツンを何処に落としてきたんだ、早く拾って来いと言いたくなるほど心配そうな顔をして足を止めた。


「テツ、休憩すっか?」
「いえ、大丈夫です。封印がある旧トリエット跡まではあと少しですし、頑張ります」
「しんどかったら俺がおぶってあげるー」
「ふふ、ありがとうございます。紫原くん」


立ち止まって心配そうにする彼らに軽く笑顔を向ける。それに安心したように頷いた彼らは前を向いて歩き出した。
神子は16歳になると神託を受け、世界再生の旅に出なければならない。
先日、歴代神子と同じように神託を受けた黒子は、幼馴染である彼らを巻き込まないようにとこっそり家を出たはずだった。
たまたま旅の途中で村を立ち寄ったと言う火神が護衛を申し出てくれたので二人旅になりそうだと思っていたらこれである。村の入り口でマントをはためかせて立ちふさがり、朝日を背に瞳孔を開いて旅への同行を申し出た赤司を筆頭に、190cm越えの男に周りを囲まれたのは恐怖だった。


『テツヤが僕たちを置いて旅に出る?笑えない冗談だ』
『黒子、お前がどう考えているかなんて分かっているのだよ。俺たちを巻き込みたくないだなんて下らない事は考えるな』
『テツを守るのは俺の役目だろ。なんで声かけねぇんだよ』
『そんな何処の誰とも知れない変眉と黒ちんが旅とか何それ、ふざけてんの?』
『黒子っち1人危険な目に合わせるなんて、そんなことになったら俺、こんな世界ぶっ壊しそうっスよ』


黒子の為に世界を壊す覚悟はあるかと聞けば当たり前だと返答するだろう彼らに、盛大に顔を引き攣らせた火神に申し訳なくなったが、どう考えても彼らの同行は回避できそうになかったため、5人はこの瞬間に神子様ご一行入りを果たしたのだった。
卓越した戦闘センスや魔術は周りから一目置かれており、他に類を見ないそれらに『キセキの世代』と呼ばれている彼らの同行は、困難だと思われた世界再生への旅路をベリーイージーモードで突き進む事を可能にした。
まずモンスターが襲ってこない。旅の邪魔をしてくるレネゲートとか言う組織の連中も一発けちょんである。この世界を支配し、人々に恐怖を与えている組織『ディザイアン』もお前ら本気で戦えば殲滅できるんじゃないか?と言いたいくらいにあっさりと退け、本日一つ目の封印が施されているらしい場所にたどり着いたのだった。
ちなみに封印を守っていたらしい魔物は登場と同時に昇天した。
余りにも鮮やかな手腕に、護衛として同行しているはずの火神はやることがなく若干拗ね気味である。
―――そして現在。


「天使に羽が生えたのだよおおおお!!」
「天使が!俺の天使が天使になったあああああ!!イェア!!」
「テツヤあああああ!!僕の天使いいいい!!!」
「テツううううううう!!俺の天使やべえええ!!!」
「天使黒ちん可愛い〜」


一つ目の封印を経て、黒子の背には鮮やかな蒼から水色へとグラデーションの掛かった美しい光の羽が生えていた。
ふわりと重力を無視して浮いた体に驚いていた黒子は、四方から体格のいい5人に抱きつかれて「ぐぇ」と苦しそうな声を上げる。


「天使への変化は苦しみが伴うから…ねぇ聞いてる?あの、あと次の封印なんだけど、ちょっと…」


黒子に神託を授けた降旗と名乗った白い翼を持つ天使は話を聞いてもらえず、もはや半泣きでオロオロしている。
5人に代わる代わる抱きつかれている黒子は普段以上に目が死んでいるのだが、大丈夫なのだろうか。
そろそろ救い出そうかと此方もオロオロしていた火神が一歩足を踏み出したところで、黒子の体がふらりと傾く。青峰が慌てて抱き上げて顔を覗き込むと、顔色が真っ青で苦しそうな様子の黒子が何かに耐えるように目を細めていた。


「う、」
「どうしたのだよ、黒子!」
「黒子っち!?」
「テツ?苦しいのか?」
「黒ちん?大丈夫?どっか痛い?」


青峰の肩に額を押し付けて小さく呻いた黒子に、緑間と黄瀬が慌てて駆け寄る。
辛そうな黒子の背を撫でる紫原は不安そうに赤司に視線を送り、それを受けた赤司は厳しい顔をしたまま頷いた。


「とりあえずその天使を殺す」
「ひぃ!?」


カッと開いた瞳孔で睨みつけられた降旗が体を竦ませるのも気に止めず、詠唱体勢に入った赤司を火神が慌てて引き止めた。


「待て待て待て!アイツがさっき言っただろ、天使への変化には苦しみが伴うって!」
「そんなの知らねーし。黒ちん苦しめるとか許さないから」
「落ち着けって!マジで!」
「黒子っちを苦しめる悪魔野郎は死ね!!!」
「天使ですううううう!!!」
「ちょ、止めろって黄瀬!!おいこら!!」


容赦なく斬りかかる黄瀬を後ろから羽交い絞めにして止める火神だが、他4名も洒落にならない殺気を放っている。というか全員いつのまにか武器装備で戦闘態勢だ。
これはマズイと顔を引き攣らせた火神が暴走寸前の彼らを何とか宥めすかして落ち着かせた頃には、次の封印場所の書置きを残してすでに降旗は逃げ帰っていたのだった。





***
降旗くんは河原くんと福田くんとのジャンケンで負けて神託授ける人になりました。一番貧乏くじ引いたのは多分この人。
元ネタ知ってる人へのネタバレ:マーテル教あらためアレクサンドラ教。
このネタから派生
※この話のネタバレ含む。

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