『キセキの世代』

言わずも知れた、10年に一人の天才が集まったとされる元帝光中バスケ部レギュラー5人のことである。
その存在は時に尊敬され、時に畏怖され、様々な意味でも注目を集める存在だ。
しかし。





カラーノイズ





「こういうの見てるとさぁ…10年に一人のアホが集まったんじゃねーかと思うぜ」
「それ、同意するわ」


引きつる額を押さえつつ、日向は疲れたように溜息を吐いた。
それに頷いたリコも同じような顔をして目前の光景を眺めている。


「相変わらず黒子っち可愛いっス!」
「なぁテツー、帰りマジバ寄ってこーぜ」
「まったく…息が上がっているのだよ。体力がないところは変わらないな」
「黒ちん、まいう棒の新味出たけど食べたー?」
「テツヤ、そんなところに居ないでこっちにこい」


てんで協調性のないカラフル5人は、揃いも揃って後輩である黒子テツヤに並々ならぬ執着心を抱いているときた。
黒子単体であれば何の問題もなく、むしろ先輩を尊敬し、仲間を大切にし、影から支える、とても出来た後輩である。
だがしかし、その反面とんでもない天才ホイホイとも言えるのだと、知っているのは彼ら『キセキの世代』を獲得した学校のバスケ部員全員だろう。


「つーかてめぇら何で来てんだよ!!とっとと帰れ!」


シュート練習をするために受け取ったボールをベシッと床に叩きつけて怒鳴る火神に、キセキ達は一斉に表情を歪めた。


「うっせーな!別にいいだろーが!俺はテツに会いに来てんだよ!」
「そうっスよ!火神っちには関係ないっス!」
「関係大有りだろうが!!こっちは迷惑してんだよ!!」
「黒子のそばで大声を出すんじゃないのだよ」
「誰のせいだ!」
「赤ちーん、こいつ邪魔」
「そうだな、敦」
「だからすぐに凶器出すんじゃねぇよ!!」


黒子を背に庇って威嚇する火神と、じわじわと距離を詰めていくキセキ達。
ちなみに火神も黒子にホイホイされた一人ではあるが、本人に自覚はない。が、無意識に黒子を守ろうとしているので問題はなかった。
むしろよく言った火神!もっとやれ!
庇われている黒子はどこか遠くに視線をやって現実逃避を図っているようだ。
そのいつもより薄く見える背中にはホロリとくるものがある。


「WCが終わってからアイツ等吹っ切れたよなー」
「迷惑な方向にな」
「あーうぜぇ!あのダァホども、黒子はうちの子だっつってんのによぉ」
「日向、クラッチタイム入っちゃってるけど…」
「いいわよ、別に。私も入りたいくらいだわ」


ボールをめきめき言わせながらキレる日向と、普段より笑顔が怖いリコを前に、一年の3人はそっと距離を置いた。
ごめん黒子、俺達には何もできないよ!
とりあえず心の中で謝った降旗たちだったが、当の黒子本人には届くはずも無かった。むしろさっきより目が死んでる。


「パターンCだ。涼太、真太郎」
「はいっス!」
「了解したのだよ」
「あ?」
「大輝、敦」
「わーったよ」
「はーい」
「な、なんだよ?」


困惑して一歩足を引いた火神に向けて、背筋がゾッとするほど鮮やかに赤司は微笑んだ。


「―――ミッション・スタート」


ダンッ!と体育館の床を蹴る音と共に、黄瀬と緑間が火神の両側に駆け寄ってその腕を掴む。
いきなりの事に動けない火神を追い抜き、紫原が黒子を抱き上げて赤司と共に外に向かってダッシュした。


「あ」


誰が発したのか、気付いた時にはすでに遅く、黒子の「か、火神くん!先輩!」というか細い声がやけに遠くから聞こえる。
我に返った火神が二人の腕を振り解いて駆け出そうとしたものの、がっしりと掴まれていては身動きさえ取れない。
同じように日向達も青峰に足止めをくらっていた。


「く、黒子ー!!」
「まて、コラァ!!!黒子くん返しなさい!!」
「何拉致ってんだ!!!てめぇら警察突き出すぞダァホ!!!」
「これは冗談じゃすまないな」
「やりすぎだろお前ら!!」
「何やってんの!?お前ら何やってんの!?」


パニクる面々をよそに、実行犯たちはドヤ顔で語る。


「黒子っちはこれから俺らと楽しい時間を過ごすんスから邪魔しないで欲しいっス!」
「お、俺は別に黒子に興味なんてないのだよ!ただ赤司が言うから…それだけなのだよ!!」
「ま、どーでもいいけど。俺とテツの時間を邪魔してくれんじゃねーぞ」


言うだけ言って蜘蛛の子を散らすように一瞬で居なくなった残り三人(こんな所で能力の高さを発揮しないで欲しい)に、誠凛バスケ部員(一部を除いて)はブチ切れた。


「…ってーことは何か?死にたいっつってんだよな?」
「俺らの可愛い後輩を拉致るってことは、そうだろ」
「ふふふふふ…いい度胸じゃないの…」
「腕がなるなー」
「黒子大丈夫かな。早く助けてやんないと…!」
「……(オロオロ)」
「あいつらぜってーぶん殴る!!」


凶悪な顔をして体育館を駆け出していった面々を、残された一年三人は手と手を取り合って震えながら見送ったのだった。





なにあれ怖い!






***
黒子に関してのみ類稀なチームワークを発揮する
―――それがキセキの世代!←

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