「翔兄ちゃん、どこ行くん」 「おつかい。おばちゃんに頼まれてん」 「何買うんー?」 「お豆腐と牛乳」 「変な組み合わせやな」 「おつかいなんてそんなもんやろ。あ、あとお茶請けも買わな」 「ユキも行くっ」 「えぇー……」 「何で不満気なんよ」 「自主トレがてら、ロードで行くつもりやってんけど……」 「スーパーやろ? 徒歩圏内やし、そんなちょろっと走っても自主トレにはならへんで」 「いや、急ぎやないって言うし、ぐるっと町内まわってから、」 「ええやんか、可愛え妹とおてて繋いで仲良う行こうや」 「繋がへんよ、いくつやねん」 「妹は否定しいひんのやねぇ」 「……妹みたいなもんやろ」 「へへっ」 「キモイ」 「かっちーん」 「表現古すぎるわ」 「たまには歩いた方がええで。チャリばっか乗っとるからそんな猫背なんよ、翔兄ちゃんはッ」 「痛ッ!?思いっきし叩いたな、今!?」 「お茶請け買うんやろ、そしたらユキ居った方が絶対ええって。ほら、行こ」 「倍以上時間が掛かるだけな気ィするわ……」 ◆ 「ほーら、やっぱりユキ居って正解やった!」 「菓子に釣られといてよう言うわ」 「まぁせっかくお一人様1本の安売りやし」 「帰ったらユキちゃんが甘いホットミルク作ってくれるなら2本買うてええよ」 「よっしゃ、絶品作ったる!」 「(ホットミルクの絶品とは……)」 「翔兄ちゃん、お豆腐どっちー?」 「絹。3つ」 「はーい」 「あとはお茶請けだけやな」 「あっち!あっち!」 「……わかったから、行くから、腕引っ張らんといて……」 「生菓子?それともお煎餅系?」 「好きなん買うておいで言われたし、どっちでもええんちゃう」 「ってことは、来客用やないんやなぁ。なら、みんなが好きなん買えばええね」 「来客用やと思たのについてきたん?」 「だってお客さん用ならいつもは買わへん高いやつ買えるし。余分に買うとけば貰えるかなって」 「嫌やこの子打算しかあらへん……」 「じゃあ焼き菓子とー、大福とー、翔兄ちゃんも好きなん選んで」 「何でもええよ」 「好きなん買うておいでって言われたんやろ」 「みんなの好きなの買えば、ボクもそれお裾分け貰うし」 「あかん、ほら、早よ選んで」 「えー、もォ……」 「(そもそもおつかいかて、翔兄ちゃんに好きなお菓子買わせるためやと思うんよね。普段、我儘いっこも言わへんし)」 「じゃあコレ」 「早ッ」 「早よって言うたんユキちゃんやで」 「そうやけど……、翔兄ちゃん、いつもコレやね。そんな好き?」 「ユキちゃんみたいに冒険心が無いだけや」 「気になるやん、新商品って」 「その右手に持っとるやつ絶対不味いと思う」 「そっかな」 「ええ加減学んだらァ?」 「えー、そんなこと言う翔兄ちゃんにはお裾分けあげへんー」 「じゃあボクのもあげへんよ」 「えっ!?」 「左」 「……はぁい」 「コレ」も結局はユキちゃんが好きなお菓子だって話。 15.11.09 |