彼女と一緒に朝ごはんを食べて、一通りの家事を済ませ、出掛ける準備をする。
洗面所で歯を磨いていると、彼女がぱたぱた駆け寄ってくる音が響く。俺の服をくいっと引っ張るので、歯磨き粉が垂れないように振り向いた。

「なぁにィ」
「ね、ファスナー閉めて」

ワンピースに身を包んだ彼女がくるりと振り向き、開きっ放しの背中のファスナーを見せる。
びっくりして「うぐ……!?」とくぐもった声が出た。……下着見えてんだケド。

「……もうちょっと恥じらいとか無ェのォ?」
「そんな今更」
「歯磨き粉飲んじまっただろーが」
「ごめんごめん」
「ったく。髪、邪魔ァ」

髪を掻き分け退けてくれた彼女の背中に触れ、ファスナーをじじっと上げていく。
俺の指先と同じくらい白い背中がやけに色っぽく見えて、心の中で舌打ちをする。

「出来たヨ」
「ありがとー」
「何でそんなめんどくせー服着ンだよ」
「可愛いでしょ?」
「そりゃ可愛いけどネ」
「それにこれは、靖友に着せてもらう為に買ったんだもの」

……アァ、もう、いつだってこいつは、こんなふうに真っ直ぐな言葉で俺を貫く。俺のツボを知ってるかのように。
でも当の本人はへらへら笑って、くるんとまわってワンピースをはためかせる。無自覚って、マジで厄介。

「……可愛いネ」
「でしょ、お気に入りなの」
「そっちじゃねーよ、バァカチャン」



可愛い彼女の甘え方

(そのまま、俺無しじゃ何も出来ないようになってしまえばいいのに)


面倒見良い荒北くんが好きです。
14.10.19

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