目当ての飲み物があって冷蔵庫を開けて、それが無かったとき。
しょーがねェなって別の物にするか、あーくそ今ぜってー飲みてェのに、ってなるかはその時の気分次第だと思うんだけど、今日は後者だった。
舌と喉が完全に炭酸を求めている。晩飯後の腹ごなしにも丁度いいかとコンビニまで行くことにした。……のはいいんだが。

「寒ィんだから、家で待ってりゃいいのにヨ」

コンビニ行ってくると声を掛けたら、彼女がついてくると言い出しやがった。ドラマ観てたから大丈夫だと思ったのに。
ロードで行く気満々だったのに、行くって聞かねぇわ二人乗りなんか出来やしねぇわで、結局歩いて行くことになった。寒い。

「家で一人なんてさみしいもん。それならさみぃ方がマシ」
「女の子が寒ィとか言わない」
「荒北の口の悪さが伝染ったのー」
「そりゃすんませんネェ」

コンビニに着くと、暖かい空気に出迎えられる。おでんのいい香りがするけど、晩飯後なこともあって誘惑はされずに済みそうだ。

「私プリン買おうかなぁ」
「デブるぞ」
「覚悟の上です」
「そんなマジメな顔で言われても」

勝手にすればァと言い置いて飲料コーナーに行く。目当てのベプシを手に取り生菓子のコーナーに踵を返す。……居ねェ。
棚を這うように店内をぐるっと回ると、彼女は何故かアイスのケースの前に居た。このくそ寒いのに、アイス買うつもりなのか。バカか。

「プリン買うンじゃなかったのォ」
「気が変わりました」
「覚悟とは何だったのか」
「プリンへの気持ちは変わっても、太る覚悟は変わらないの」
「覚悟ごと変える気は無ェの?」
「あ、これにしよー」

ひとの話を聞く気は無いらしく、ケースの扉を開けて取り出したのはカップアイスだった。冷気が当たって寒いのでさっさと閉めさせる。
冷たいからか手のひらまで覆った袖越しに持たれたアイスを見ると、珍しくチョコミントのアイスを選んでいた。

「いつもの苺のじゃねェんだな」
「ん?うん。荒北の自転車の色みたいだなって思って」
「…………そォ」
「綺麗な色だよね、あの自転車」
「……ビアンキっつーンだよ」
「びあんき」
「そう。覚えてネ、オレの大事なモンだから」

そう言うと、呪文みたいにビアンキビアンキと繰り返す。その様子に苦笑しつつ、家に帰ったら綴りも教えてやろうと思う。

「ほら」
「ビアンキ」
「合ってるけど違う。アイス寄越せっつってンの、買ってやっからァ」
「え、いいの?」
「早くしろ、溶けンぞ」
「えぇ……荒北が優しくて怖い……」
「バカ言え、いつも優しいだろーが。その小せェ胸に手ェ当てて思い出してみろヨ」
「ほら早速優しくない!」



真夜中に君が見せる青空

(その青空は甘すぎない甘さで、まるで俺みたいだって君は笑った)


この先チョコミントアイス見るたびヒロインを思い出す荒北。
15.11.13

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